ローバーミニ メンテ【ゴーリー編集長コラム 14】ミニさまのアイデア………………中編

サルーンのミニ一台で生活していると、撮影機材が多くなったときやキャンプ取材に出るときなどに荷物スペースを作るために助手席を外してしまうことは往々にして起こる。時にジェットバックを使ってはいるけれども、やはりカメラケースや照明機材は大きいし、室内に入れておきたいからシート外しは常套手段だ。乗車するのはボクだけなので、何の躊躇もなくシートは引きずり出してしまうのである。場合によってはリアシートの座面（これはけっこう厚みがあるのだ）や背面も外して、カーゴスペースに転用するのである。こうすると、後方視界が充分に確保できている状態でも、驚くほどに荷物が入る。ちなみに、助手席がなければ、エアマットを敷いて足を伸ばして寝ることだってできるのだよ。最近は実行することはあまりないけど……

　とはいっても、日常的にシートを外しているわけではないし、妻を仕事場に送り迎えするのに、前席は必要だ。もっとも、思い切ってフロントシートは恒常的に取り外して、リアシートにゆったりと足を伸ばして座るという、ショーファードリブンなスタイルもあるが、ちょっとばかり異質な雰囲気だしドライバー・ファーストじゃないから、自身としてはケースバイケースで使い分けたいとは思っている。それでも、ラバーコーンの生みの親、ドクター・アレックス・モールトンのミニはシートが無く、博士はリアシートに座っていたなぁ。そうだ、トランジャンの取材で一度、妊婦さんが乗るために助手席を外してきたオーナーに会ったこともあるか……。

　で、以前からシートを止めているボルトを容易に取り外しすることができれば、もっと便利になると思っていた。そもそもミニのシートを取り外しをするのにボルト2本で済むこと自体が希有なことで、そんな簡素なシート固定方法の自動車なぞ、そうそう存在しないのではある。7/16のラチェットとスパナさえあれば作業はできる。それでも、なおさらに簡単に外したいとは……、人の欲は無限である。

　実のところ、ずーっと長いことそんなことを考え続けていて、いろいろと策を凝らしてきた経緯はある。一度、シート側の脚に開いたネジ穴を鍵状の溝にして、シートの背もたれを起こして上に引き上げれば、ボルトから脚が抜けるように加工したこともある。溝の向きと形状を上手く考えれば、走行中に人が乗っても外れることは無かった。ただ、それは旧型の軽いシートならば使い勝手も悪くなかったけれども、重量が増した’97シートでは少々躊躇して試していない。それと、万が一衝突事故を起こしたときに助手席が吹っ飛んでいってしまったら寝覚めが悪すぎる。ので、溝作戦は封印中である。

　工具を使わないでボルトを外すことができれば手間がかからなくなる。蝶ねじを使ったり、純正品のナイロックナットに円盤状の摘まみを付けて手回しできるようにもした。まぁ、それでも充分に簡素化できてはいたのだが、某日、ホームセンターでT字型の羽が広がるボルトを発見してちょっと閃いてしまったのだ。それも、サイズ的にも適合してしまう6ミリボルト。思わずナットとスプリングを合わせて物色して今回の作品、名付けて『スピード・Tボルト』を作ったのである。

　そして初装着。工具なしで使えるのは間違いないのだけれども、すでにウィークポイントも露見して、まずは再装着時の穴合わせが、少々やりにくい。それは、T字の羽がストレート状態に固定することが叶わないから……。そして、シートが乗る部分に羽を収納する溝があること。つまり、中実のボルトシャンクじゃないので強度的にどうかな、と。ともあれ、しばらくは使ってみることにする。その結果はまたいつか報告するので……。