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SUキャブレター大全!! 1/2|ローバーミニ キャブ メンテ 

キャブレターの話題になると、ウェーバーやFCRといったスポーツキャブレターを取り上げることが多いが、やはり純正採用されていたSUキャブのことも忘れてはいけない。そこで今回はミニを支え続けたSUキャブについて、その歴史を振り返っていこう。

SUキャブレターの登場

 ミニの世界では’92年の登場以来、コンピューター制御のインジェクションが主流となったが、アナログなイメージやリニアな加速感、チューニングの幅の広さから、キャブレターミニを求める声は当時から少なくなかった。しかし一方で、ストリートミニでご紹介しているミニをご覧いただければわかる通り、多くの車両にはウェーバーやFCRといった、いわゆるスポーツキャブレターに換装されていることが少なくない。もちろん、これらも、走りを楽しむ上では非常に魅力的なキャブレターではあるのだが、果たして、ミニに純正採用されていたSUキャブに魅力はないのだろうか?
 今回は、インジェクションやスポーツキャブがミニ業界を席巻するいまだからこそ、SUキャブがもつ歴史やポテンシャルを振り返り、その魅力に迫りたい

 キャブレターミニの純正キャブとして、’95年まで採用されていたSUキャブレターは、20世紀初頭に英国のメーカー「スキナーズ・ユニオン」から登場。その最大の特徴である「可変ベンチュリー」によって、当時の自動車業界で大いに注目された。それまで主流となっていた「固定ベンチュリー」は、吸気の通り道の内径を絞ること(ベンチュリー構造)で負圧を発生させ、これにより気化燃料を吸い上げることで混合気を供給していたのだが、回転域によって空燃比が変化するため、低回転域と高回転域でのセッティングの両立が難しかった。

一方、SUの「可変ベンチュリー型」はボアを塞ぐ形で設けられたピストンバルブが回転数に合わせてせり上がり、ベンチュリー径をコントロールすることで、すべての回転域で負圧を安定させることができた。これに加え、テーパーがついたジェットニードルが燃料の噴出量をコントロールすることで、回転数に合わせて最適な空燃比に調整。つまり、低速から高速まで、すべての速度域で理想的な混合気の供給が可能になったのだ。当時としては革新的な性能を誇ったSUキャブは、英国を中心にさまざまな自動車メーカーから、永きにわたって純正採用されることになり、登場から50年ほど経ってから発売された、モーリス・ミニ・マイナーとオースチン・セブンにも装着されたのだ。また、SUキャブは、水平方向に外気を吸い込む「サイドドラフト」構造を採用している。これにより、インレットポートが水平に向いているミニのエンジンにとっては、吸気の流れに抵抗が生じにくくなるので、そうした面でもミニと相性がいいキャブレターといえるのだ。ちなみに、848ccエンジンを積んだMkIからMkIIIまでのMTモデルには、純正キャブとして口径が1 1/4インチのSU HS2が採用されており、それ以降のミニ1000と、商用モデルのバン、ピックアップ、モーク、そして、すべてのATモデルにはHS4が採用されていた。

クーパーモデルに装着されていたSUツイン

 SUキャブのスポーツ仕様として目にするのが、SUキャブがふたつ並んだ「SUツインキャブレター」だが、これがミニに初めて純正採用されたのは、’61年に登場した「ミニ・クーパー」から。これはスポーツモデルとして登場したクーパーには997cc(’64年からは998cc)のエンジンが搭載されていたため、より多くの混合気が必要になったことと、エンジンの吸気効率の改善を図ったためと考えられる。(なお、997ccから998ccにアップデートされた際、ジェットニードルを変更することで、セッティングにも違いがもたらされている)。

その後、登場したクーパー1071Sや1275Sから、MkIIIクーパーS、さらにイノチェンティ・クーパーSまで同様のSUツインを純正で搭載。それぞれ排気量をはじめ、エンジンのスペックは大きく異なるが、いずれもHS2を2連装したものが採用されていた。ただし、’90年にクーパーの名を復活させたキャブクーパー1.3には、改良型のHIF44(口径1 3/4インチ)が1基だけ装着された。

モータースポーツシーンでのSUキャブ

’63年のチューリップ・ラリーでは大幅な改造が認められていたため、パティ・ホプカークとヘンリー・リドンが搭乗したミニ・クーパー「17CRX」には、チューニングヘッドの搭載やシリンダーの高圧縮化に加え、CパーツとしてラインナップされていたSU HS4ツインキャブ(口径1 1/2インチ)が装着された。これにより、パティとヘンリーのコンビは総合2位、クラス優勝を果たした。一方で、ダウントン・エンジニアリングで製作されたMkIIIのコンプリートカーには、チューニングヘッドに特製のカムシャフトがセットされ、シリンダーは12:1まで高圧縮化されていたが、キャブレターは純正と同じHS2ツインを装着。出力は85hpsまで登った。



なお、ダウントンのワークスマシンは、当初SUツインを搭載していたものの、モアパワーを求めて、後年はウェーバーに載せ替えられている。現在のSUキャブを生み出したスキナー兄弟が率いるスキナーズ・ユニオン社は、1910年に創業されて以来、英国を中心とする世界中の自動車業界を支え続け、ときには日本の日立ともOEM契約を結んでいた。しかし、やがて自動車の吸気がインジェクションに入れ替わったことで純正品としての供給が減少。’95年に本国で販売されていたキャブレターミニを最後に、純正供給が終了した。現在は、ミニをはじめとするクラシックカー用のパーツとして、バーレン・フュエルシステム社が新規製造を続けているほか、各メーカーから保守やチューニングのためのパーツがリリースされている。

2/2へ続く…

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