”トルク”と”馬力”、自動車やバイクの性能に関する話題には必ず取り上げられる言葉です。
それはエンジンの、人で言う所の体力測定した結果のようなものと思ってください。
どちらも測定される要素、すなわち時間と速度の関係を数値化しています。
つい最近、このような図をお見せしていますが、もう一回見てください。
これは2種類のカムシャフトでトルクと馬力がこんな風に異なるんだよ、というグラフです。
トルクも馬力も3000回転までは黒い線のエンジンが勝っていますが、やがて逆転して赤い線が上を行きます。
このエンジンは最終的に100馬力と110馬力というように10馬力の最高出力の差になっています。
そこで見方を変えて、グラフが交差する3000回転までに絞って考えてみます。
仮にあなたが二つのエンジンを乗り比べて、3000回転まで3速で引っ張ったとします。ミニに乗っていて、3000回転まで回すことは普通にあると思いますので、自分がシートに座って発進して3速までシフトアップしてアクセルを踏み込んだ状態で3000回転になった、そんな想像をしてください。
その時に、黒い線で表されたエンジンはトルクも馬力も、もう一方のエンジンに勝っています。
乗り比べて皆さんはどんな風に感じると思いますか?
このグラフにはアクセルを踏み込んだ際の時間の経過とトルク・馬力の関係は表されていませんが
おそらく多くの方が、黒い線のエンジンの方がアクセルを踏み込んだ際に、赤い線のエンジンより力強く、加速感がある、そんな風になるんじゃないかなと想像されると思います。
そういう予測に概ね正解じゃないかと思います。そして3000回転を超えると赤い線のエンジンがより加速感が増す、という感じです。
そこで戻ってお話しすると、トルクが増したように感じるというのは、運転して力強さが増したように感じるとか、クラッチミートに気を使わなくてもエンストしないとか、さらに砕いて言うと運転しやすく感じた、ということになります。
ですから、”トルクが増したように感じる”=”馬力も増した”と考えて間違いありません。トルクと馬力は分けて考えるのではなく、実用域で感じる乗りやすさと、限界的な最高速度、この異なるジャンルの指標と考えても間違いではありません。
多くのミニがエアクリーナーとマフラーの交換で運転を楽しんでいます。その目的のほとんどが、吸気音がもっとダイナミックに聞こえるように、排気音がスポーツカーっぽく迫力が出るように、そう思って交換されています。
で、実際にはどうかというと、乗りにくいというほど変化は無いにしても、
吹け上がりが良くなった感じがする、トルクが少し細く(弱く)なった感じがする、と多くの方は思われるようです。
吹けが良くなったとなれば、高回転まで回る=馬力が上がったとも思えるので弊害はありません。
ただ、これまで説明した通りに考えれば、エアクリーナーやマフラーを替えた場合
黒い線の出力特性だったっ物が、赤い線のようになった、とも考えられます。3000回転を超えてグラフの上下が逆転するように
最終的な馬力は増えるのかもしれませんが、実用域でのトルクを細らせてしまっている部品交換はあると思います。
ではトルクが増したような状態とは、身近な例えで言うとどういう状態なのかというと、
一番わかりやすい比較は、新車と中古車です。10年位前までは走行距離がすごく少ない、2万キロに満たない車輛が稀にいました。そういう車輛はとても運転しやすいのです。回転の上がりも3000回転までならはっきりと違いが感じられるくらいスムーズだし、そもそもギアチェンジの感触が良いですから、そう感じてしまうのかもしれません。
そう感じるのは、エンジンが消耗していないからです。良い混合気、良い圧縮、良い火花について条件を満たしているからそのように感じるわけです。
それぞれについてミニなりの要因がありますが、インジェクションミニのエンジンに関しては、ピストン回りの気密の低下、排気における触媒やポート内のカーボン等が原因で”良い混合気”を新車時のように吸い込めない、という劣化が事実起きています。
排気が排出時に発生する負圧で次の吸気を引き込む、とでも言うのが分かりやすいと思います
では、エアクリーナーやマフラーを替えてもそういうトルクを細らせるのかというと、マフラーに関しては抜けが良すぎると「脈動効果」と「慣性吸排気」を下げてしまう事が多くあります。文字から大体の意味は予想していただけると思いますが、適度な排気抵抗が無いと断続的な気流は生まれないという理論があります。
エアクリーナーについては、吸気部分に密閉された状態がある無しでは低回転時にインマニに負圧が発生しないためガソリンがシリンダーに入って行かない症状がおこります。どちらもグラフの3000回転以下の範囲で起こり得る現象についてお話しています。
実用上純正のエアクリーナーを勧めるのはミニの特性に合っているからです。
ただしミニは実用域で5000回転まではほとんど使いませんから、3000回転以下で考えることは、エンジン全般について起こり得る大切な事だと言って過言ではありません。
DHR-CCVSはクランクケース内の内圧を下げて、ピストンが下がった際に生じる負圧を増し、その負圧で混合気をより安定的に吸入して良い混合気、良い圧縮、良い火花に結び付けられます。
WSC-VTEはインジェクションミニのインマニの経路が長く、インジェクターの吹き出し方向に対して2度大きく曲がり込む形状もあってエンジン側からの吸気速度が落ちてしまい、その結果シリンダーが下がった際の負圧を有効に使えない弊害がありましたので、最適なサイズに一旦絞り込むことでエンジンの低回転域でも安定した吸気に寄与しています。
SIFに関しては装着することによって3000回転以上でインジェクター部分の形状がファンネル効果を発揮してミニのエンジンカムシャフト特性、最高回転6000回転+に合った吸気特性に合わせてあります。
それぞれの製品は開発製作段階からブログに詳しく紹介していますので、遡ってお読みください。
そして、それらが段階的に装着することで、装着前後の差をどなた様にも感じていただけるものと長年販売し続けて相応の評価をいただいております。
チューニングとかパワーとか、ミニにおいてもいろいろな考え方がございますが、仮に最高出力だけを狙うのであれば、アイドリングは言うに及ばず、アクセル全開時の一点においてのみセッティングや効果を出せる方法を選べば良いのであって、それは特殊な使い方でのみ問われる成果です。
ミニのECUは3000回転+以降の燃調プロクラムはあらかじめ定められたセッティングに固定されています。理由は高回転時における濃い目のセッティングでエンジン保護をしているからです。
その代わりと言っては何ですが、3000回転以下では徹底した薄いガソリンで厳しくなった排ガス対策をしています。
だから、状態の良いエンジンはプラグは真っ白です、カサカサで。従来のこんがりきつね色という常識はインジェクションミニのエンジンには当てはまりません。
エンジンに関係した内容は調べればたくさん出てきますが、読むには難解なものが多くあります。
ここでは私なりにかみ砕いてお話しておりますので、ちょっとしたズレはあるかと思いますがザックリと理解を深めていただくことに役立てれば読んでいただいて今後の参考にしていただけたらと思います。
なお、CCVSもVTEもSIFも現代の自動車にはメーカー生産の段階ですべて取り入れられている理論です。
DHRが古すぎるミニのエンジンに現代的なモディファイを行っているのが実情です。