特別なノウハウでも技術でもありませんが、ミニに乗ってる方は知っていて損はありません。
どういう気持ちでこの時代にミニを選んで乗っているのか人それぞれですが、トヨタやダイハツの不正が世間を騒がす時代に、新しく手に入れた車にカスタマイズやチューニングできる余地はありません。ミニ以外で程ほど新しく改造できるのはワイルドスピードに出てくる時代の日本車やアメ車、バイクならハーレーダビッドソンくらいです。豊富なアフターマーケットパーツを背景に、自分で少しづつ週末にいじれる余地が残されています。
さて、ミニの場合ですが、ここ数回紹介しているシリンダーヘッドの交換は、最も交換作業コストが掛からない改造ながら、最も効果を得やすいメニューになります。
例えば、他の魅力的な改造、たぶん思いつくのボアアップだと思いますが、それだとエンジンの脱着、エンジンの分解、ボーリング加工、排気量アップに伴う強化部品への交換、例えば新しいスタッドボルトや増える発熱量に対するクーリング対策も必要です。
そしてボアアップすれば同時に圧縮比が上がってしまうので、そのままだと高くなった圧縮にこれまでの燃調が大きく外れてピストンブローやガスケット抜けを誘発します。それにピストンだけいじるのはもったいないので、カムも交換しない手はありません。
最近のミニ屋さん、ほとんど外注に出す為、ボアアップやカム交換、エンジン脱着で100万以上請求するそうです。いったいどんな明細なのか見てみたい気がしますが、どうせ○○一式とかと書かれているだけでしょう。
インジェクションミニの場合、カム交換しなくてもヘッドの交換だけでノーマルのクーパーモデルが計測値50馬力から70~80馬力までアップします。カム交換無しでもこの数値。とても効率のいい改造です。エンジンも下ろさなくていいし、それでいて普通に毎日乗れます。
写真はノーマルのシリンダーヘッドから取り出した吸気バルブとスプリング、キャップ、コッターです。
バルブのスプリングを留めるキャップ部分に溝が切ってあって、そこにテーパー状の部品が2分割で差し込まれてキャップを留めます。溝が3本あるからトリプルコレットと呼びますが。
こちらは入れ替えるサイズの大きなバルブ、強化された2重のスプリング、キャップ、キャップを留めるコッターです。
2mmほど直径が大きいものに替えて、キャップはチタン製の軽くて上面の形状が少し変えてあるものです。コッターは溝が1本の形になります。
バルブシールも写っていますが、首周りにスプリングを巻いた一般的なミニ用です。国産の金属カラーを巻いたものは使いません。
吸気バルブの裏側はこんなに焼けたオイルが固まって乗っています。吸気の際にバルブシールを抜けてエンジンオイルもバルブに沿って流れ込み、焼き付いて溜まっていきます。ちなみにこの状態になったバルブに使われていたのは日本車用の流用品です。だから、意味がありません。
吸気バルブで見た目これくらいの差があります。キャブレター車で思いっきりチューニングする場合だと、あと2mmくらい直径の大きいものを使いますが、当然排気バルブも大きくなるので、ノーマルのバルブガイド位置で二つのバルブを差し込むとバルブ同士が当たってしまいます。なのでミニ用ではない外径の少し大きなバルブガイドを打ち込んでバルブの中心位置を外にずらします。そしたらぎりぎり二つのバルブが収まるわけです。それって何かカッコいい!と思えば、やっても大丈夫です。
リフトの大きいカムに替えてシリンダーヘッドはノーマル、みたいな組み合わせよりはずっとマシです。
スプリングは、ダブルとシングルでこれだけ長さの違いがあります。縮めて反発を稼ぐか、固い素材を2重にして反発を稼ぐか、よく見ていただくと巻き数が異なります。巻き数の多いスプリングを縮めるとスプリングの間隔が少ないものより縮まります。
シビアなチューニングをする場合は、カムのリフト量に対してロッカーアームで1.3倍、ハイリフトで1.5倍スプリングを押し込むので、実際にスプリングをリフト量だけ縮めて、最も縮んだ際のスプリング線同士の間隔を規定量以上になることを確認しないと、バルブがつぶれ切ってバルブクラッシュと呼ばれる状態になっちゃいます。
最後は、自分でチューニングする人がいたら気を付ける部分の話です。
私はチューニングヘッドのバルブがシングルコッターになったら必ずキャップも替えます。
それは写真を見れば一目瞭然なんですが、下の写真はシングルコッターのバルブにトリプルコッターのキャップを付けた場合、その逆のトリプルコッターバルブにシングルコッタのキャップを付けた写真です。
明らかにバルブのトップ部分の突き出しがマズいでしょ?コッターがキャップにしっかり下がっていない、下がり過ぎでバルブが沈んでるように見える、という事です。
ミニのエンジンは豊富な部品で魅力的なエンジンフィーリングに変化させることが出来ます。カムとヘッドを変えればいろいろな特性に変えられます。カム交換はエンジンの脱着が必要ですが、インジェクションエンジン用は中間トルクを増やしてくれるのでピークパワーだけじゃない良いフィーリングも感じられます。