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スマホ決済アプリで払えるようになっても騙されないぞ! 旧車イジメの日本の自動車税制にもの申す!

スマホ決済アプリで払えるようになっても騙されないぞ! 旧車イジメの日本の自動車税制にもの申す!

 ゴールデンウィーク明けに郵送されてくる自動車税の納付通知は、自動車ユーザーにとって毎年泣かされる季節到来である。

 日本では新車新規登録からガソリン車で13年経った車両は自動車税が15%(軽自動車は20%)の重課制度となる。さらに自動車重量税は13年超が約40%、18年超で約50%それぞれ重くなる。

 もともと日本は自動車の税金が高い。日本の自家用車ユーザーは例えば240万円のクルマを13年間使用すると、6種類の自動車関連諸税が課せられ、その税負担額は約180万円になると試算されている。

 これはアメリカに比べて約30倍、ドイツの約4.8倍、イギリスの約2.2倍もの税金を支払っているという。少なくとも先進国のなかでは日本は世界で最も税負担が大きい。

 ただでさえ、税金が高いうえに、13年超のクルマから増税。しかも、あと10年、15年もすると純エンジン車の新車販売禁止……。

 ドイツでは、2030年までに純ガソリン車、純ディーゼル車の新車販売禁止を打ち出しているが、一方では30年以上前に生産されたオリジナル状態を維持しているクルマには、ヒストリックナンバー制度というものがあり、優遇税制が受けられる。

 そんなことを思い出しながら、今年の自動税納付書の封筒を開けると、令和3年5月からLINE PayやPayPayなどのスマートフォン決済アプリで納付できることになったという(関係会社にお金が落ちるなら安くしろといいたい……)。

 そこで、今回は、新しい自動車税納付方法と、13年超の自動車に関する税金を世界各国と比べてどう違うのか、徹底レポート!

著者・柳澤隆志 PROFILE:外資系証券会社に25年勤務、米系証券会社東京オフィスにて史上最年少で最上級の職位であるマネージングディレクターに昇格し市場・投資銀行業務に精通、現在経営アナリストとして独立。

 社会人2年目で初代BMW Z3を購入、その後1996年式ポルシェ993カレラ4Sを21年間乗った後、新車同様のフェラーリ458イタリアが直近納車され、そのNAサウンドと切れ味鋭い走りを目下楽しんでいる。2018年式ヤマハYZF-R1も保有。

【画像ギャラリー】発売から30年経過! 自動車税を優遇してでも守りたいニッポンの名車たち


PayPayで自動車税を払うとポイント還元!?

令和3年5月からスマホ決済アプリで自動車税を支払えるようになった。便利になったのだが一方で扱っている会社にお金が落ちることを考えると喜んでばかりはいられない

 多くのみなさんのお手元には今月自動車税の納付書が届き、手続きも終わった方もいらっしゃるだろう。私の手元にも3枚の納付書が届いた。クルマ2台分5万1000円と7万6500円に加え、バイクの軽自動車税6000円、計13万3500円。

 キャッシュレス決済を極力使うようにしている筆者は、昨年まで自宅からインターネットバンキングでペイジーを使って納付してきた。手数料はかからない。

 筆者在住の東京都では自動車税はクレジットカードでも支払いが可能だが、およそ1万円当たり80円の決済手数料が必要。筆者の場合は税込みで1043円、約0.8%の手数料を自動車税に上乗せして払う必要がある。

 ポイントがそれ以上ついたりするのであればクレジットカード払いでもいいかもしれない。

 だが最近PayPayを使って自動車税が払えるようになったと聞いたのでやってみることにした。10万円以上決済すると1%還元されるので食事代が浮きそうだ。

 追加の決済手数料がかかるクレジットカードでは追加の決済手数料を払うことと比べると、PayPayでポイント受け取れるというのはオトク感が強い。

 手始めに区に納める軽自動車税6000円の納付書のバーコードをPayPayアプリでスキャンしてみた。

 だが「現在この事業者はご利用できません」というエラーメッセージが。調べてみるとPayPayで軽自動車税を払えるところは東京23区でも港区、渋谷区、江東区など10区ほどのようで筆者の住む区では支払うことができなかった。

 気を取り直して自動車税納付書をスキャン。自動車税は北海道、青森、秋田、岩手、山形を除く43都道府県でPayPayによる支払いが可能。自動車税2台分、12万7500円を決済すれば1%分、1275円が還元される。

 と思って喜んでみたものの、そもそもクルマ2台とバイク1台を保有するための自動車税を月額にして1万円納めていることに気が付き、クルマの税金の高さを再認識することとなった。

自家用車の税金はこんなに高い

 おさらいしておくと、今回納付書が届いた自動車税と軽自動車税は毎年4月1日時点での所有者に課税される。自動車税の額は乗用車は排気量、トラックは最大積載量に応じて決まる。

 自動車税は地方税で各都道府県に、軽自動車税は各市区町村に、使い道が特定されていない一般財源として納められる。

 そもそも自動車税は明治6年に導入された馬車・人力車を対象とする国税である車税に端を発し、耐久財である自動車に対する財産課税と道路の使用に対して応分の負担を求める道路損傷負担課税の性格があるとされる。

 乗用車は排気量0.5リットル刻みで自動車税が上がっていく。たとえば去年日本で一番売れたトヨタヤリスの一番人気のグレードG1.5の排気量は1490cc、「排気量1リットル超から1.5リットル以下」となり自動車税は3万500円。排気量が1500ccを超えるのと超えないのでは毎年の自動車税が5500円変わってくる。

排気量が上がるごとに自動車税の増え幅も大きくなる、また車齢が13年を超えると税金が重課される。事業用と比べて自家用車の税金が極めて高いこともわかる(出典:総務省HPなど公開資料より筆者作成)

 2019年10月以降登録の自家用車(水色の棒)は、排気量2リットル以下までは排気量が0.5リットル増えると税金が5500円上がる。

 それが排気量2リットル以下から2.5リットル以下に増えると7500円、4リットル以下から4.5リットル以下に増えると10,000円税金が増え、排気量に対する累進課税となっている。また自家用車の税金が事業用車に対して3倍ほど高いこともわかる。

車齢13年を超えるとクルマの税金はもっと高くなる

MY2008のR35GT-R。筆者の先輩がデビュー直後に手に入れ、意味の分かる人はニヤリとする「7201」というナンバーをつけていたのが懐かしい

 ただでさえ高い税金が、車齢13年を超える自家用車(ディーゼル車は11年)はさらに高くなっているのが上のグラフのオレンジ色の棒を見るとわかるだろう。その率約15%。

 この重課措置は平成13年、2001年の自動車税のグリーン化制度の創設に伴い特例措置として導入され、現在までその特例は延長されている。

 エコカーに対する税金を軽くし、その分減った税収を「新車新規登録から一定年数を経過した環境負荷の大きい自動車は税率を重くする」ことによって補うという措置。

 車齢13年超といわれてもピンとこないので、具体例を挙げよう。

 R35GT-R (排気量3799cc)の最初期型、2007年12月、つまり今からおよそ13年半前にデビュー。販売直後にデリバリーを受けてGT-Rのオーナーになった人には今年から重課された7万6400円の自動車税納付書が届いたはず。昨年までの6万5500円から約15%、9900円の増税。

 デビュー当時の資料を見ると10・15モード燃費は8.2km/L。計測法が違うので単純比較はできないが現行モデル対比ざっくり10〜15%燃費が悪い。

 ただし2008年式のGT-Rが現行型対比でペナルティを受けなければならないほど環境負荷が大きいとはとても思えない。

 もう一つの例がホンダフリード。初代が2008年5月、まさに13年前にデビュー。排気量1496ccは今と変わらず。

 カタログ情報を見る限りこちらも現行型対比10~15%程度燃費が悪いだけで(JC08モード12.8〜16.6km/L)、最初期型オーナーの2022年の自動車税は5100円高い3万9600円となる。

当時のコンパクトミニバンとしてはややマッチョなデザインで、お父さんが運転してもサマになると評判で大ヒットした初代フリード、ショーンレノンのCMも懐かしい

 最初期型のフリードから最新型のほとんど排気量の変わらないジムニーシエラ(1460cc)のATに買い替えると自動車税は増えないが、シエラのWLTCモード燃費は13.6km/Lなのでむしろ乗換えで環境性能は悪くなるかもしれない。

 高くなるのは自動車税だけではない。13年目は車検の年だが、車検ごとに払う自動車重量税も高くなる。

 2008年式R35GT-R(車重1800kg弱)の重量税(2年分)は前回車検の時の32,800円から4万5600円へと39%(!)の増税となる。自動車税と合わせると1年あたり16,300円税金が高くなったことになる。

 2008年式フリード(車重1400kg弱)は同様に2万4600円から3万4200円へと39%の増税に。自動車税とあわせた増税額は1年あたり9900円になる。

自動車重量税は車齢13年、18年の2段階で重課される(出典:国土交通省HPなど公表資料より筆者作成)

 さらに車齢が18年を超えるクルマの重量税は普通のクルマの54%増しとなる。筆者もつい1ヵ月前まで1996年式ポルシェ993カレラ4S、つまり新車登録から25年経ったクルマに乗っていたので全く他人事ではなかった。

 毎年6万6700円の自動車税を払い、車検ごとに3万7800円の重量税を払っていたので税負担の重さが骨身にしみてよくわかる。

 昭和生まれの人間としては、古くなったものでも大切に使うことが大事ですぐに捨ててしまうのはもったいないと教わって育った。

 少々燃費は悪くても古いクルマを大事に乗る方が新車生産にかかわる炭素排出量を考えればエコだという考え方もできる。

 先ほどのR35GT-Rの最初期型と現行型の比較やフリードとシエラの例で分かる通り、「古いクルマは環境負荷が高いので税金でペナルティーをかけよう」というのは筋の通った環境政策というよりも税金インセンティブによりクルマの乗り換えを促進せるための経済財政政策と考えたほうがいい。

 2020年8月に行われたJAFによる「自動車税制に関するアンケート調査」の中での「個々の車の使用実態(走行距離等)や燃費性能等を考慮することなく車齢だけで一律に重課を行うことについてどう考えるか」という質問に対し、83%の人が「車齢だけで一律に重課を行うことは反対」と答えており、「現行のままでいい」という12%を大きく上回った(回答数17万97人)。

海外では古いクルマは文化遺産として税金の優遇措置がある

Hナンバーを取得してクルマを大事に乗って楽しむ文化。実に羨ましい

 日本と同じ自動車生産大国のドイツ。環境意識の高い国でもあるが、クラシックカーは文化遺産保護の対象となっている。

 よく知られているがドイツには「ヒストリック(H)ナンバー」の制度があり、文化的価値を持つ旧車に税金優遇措置がある。

 30年以上前に新車登録されたクルマでオリジナルに近く保存状態がいいことと認定書の取得が条件となるが、Hナンバーを取得すると自動車税が一律年間191.73ユーロ(約2万6000円)となる。

 現行のVWトゥアレグ(排気量2995cc、CO2排出量233g/km)への自動車税が約460ユーロ(約6万1000円)であることを考えるとかなり安い。

 2020年1月現在のHナンバーでの登録乗用車台数は52万5968台と全体の1%に上る。

 登録台数第1位は(全然驚かないが)VWタイプI(Kafer=ビートル)の約4万台、2位メルセデス・ベンツW123(約2.2万台)、3位はメルセデス・ベンツR107(約1.9万台)で4位がポルシェ911(約1.6万台)。

日本でも人気が高く400万円オーバーがざらなVWタイプIオーバルウインドウ(1956年式)。写真はHナンバーを付けてミッレミリアに出場
今見るととてもオシャレなW123メルセデス・ベンツ(1976年式)
とてもコンパクトでネオクラシックな趣のあるR107型350SL(1980年式)

 もう一つの自動車大国アメリカ。アメリカはうらやましいことに自動車保有に対しての税金が著しく低い。

 ニューヨーク州の場合、車重に応じた登録税が年間26-140ドル、使用税もマンハッタンなど人口密集地に住んでも年間40ドル。大して税金がかからないため、旧車を特段優遇する必要もない。

 ただし車齢21年超のクルマを輸入する際は排出ガス規制の適用外、また車齢25年を超えるクルマを輸入すると(例の25年ルールだ)自動車安全基準の適用外となる。お国柄としてクラシックカーに対する理解も深い。

 ではその他の国はどうだろうか。

 MGやロールスロイス、ジャガーやアストンマーティンなど歴史ある自動車メーカーを輩出したイギリスでも1981年1月1日以前に生産されたクルマもしくは1月7日以前に登録されたクルマは自動車税が無税。

 そして生産もしくは登録から40年経過したクルマ、過去30年に大幅な改修(シャーシ、車体、エンジンなどの交換)がなされなかったクルマは車検が免除。

 フェラーリやフィアット、ランチアなどの自動車メーカーを抱えクラシックカー人気も高いイタリアでは、車齢30年以上は自動車税が免除、もしくは車齢20年以上で歴史的価値があると認められたクルマは半額となる(一部の州を除く)。

 環境保護先進国スウェーデンでも古いクルマへの優遇がある。車齢30年超のクルマは自動車税が免税、通常は1年毎の車検も2年毎となる。また車齢30年超のクルマを輸入する際には関税が免除、付加価値税が25%から12%に減免される。

 電気自動車の導入を税金優遇策で積極的に推進し環境負荷の高いクルマへの税負担を高くしているスウェーデンでも、短い夏をアメリカンクラシックオープンカーで楽しむフェスティバルが人気で古いクルマに対するリスペクトがある。

古いクルマへの敬意のない日本

各メーカーが最近レストア事業を始めており、ようやく自社の古いクルマのパーツ供給に力を入れてきている。政府は電動化よりも先に自国のクルマ文化遺産のことを考えてHナンバーの創設をお願いしたい

 世界遺産に登録された官営八幡製鉄所、三菱長崎造船所、軍艦島などの「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」は、日本がアジアで初めて近代化を成し遂げ、後に日本の基幹産業となる製鉄・製鋼、造船、石炭などの重工業において急速な産業化を成し遂げたことを世界と後世に語り継ぐためのものだ。

 それと同様に自動車産業は戦争で廃墟となってからの日本の奇跡的な復興と経済発展を支えた立役者の一人で今でも日本の労働者の8%が就業する基幹産業であることを考えると、その過程で生み出してきた過去の名車に対して社会からリスペクトがあってもおかしくない。だがそういった評価はあまりなされていないのが現状だ。

 環境意識の高いドイツでも、現行の排出量基準は満たさないが走行距離が短く総排出量は少ないことを考慮し、古いクルマの持つ歴史的文化的価値を高く評価して税制面で優遇している。

 アメリカや中国、香港などではスカイラインR32GT-RやS13シルビアなど日本の旧車は大人気だ。だが日本では税金という負のインセンティブを用いてそういった価値あるクルマからユーザーを早く乗り換えさせようという制度設計になっている。

 それではあまりにも自分たちの国の発展の象徴としての古いクルマに対してリスペクトがなさすぎるのではないだろうか。

 日本では車齢が30年以上の乗用車登録台数は全体の1.5%ほど。それらのクルマに対して多少税金を減免しても税収にそれほど大きなインパクトはなく、逆に旧車レストアなどが盛んになること、車齢延長によるライフサイクル全体で見た排出量の抑制などによって長い目で見て税収ベースの拡大面でも基幹産業である自動車産業の未来にとってもプラスの面があるように思われる。

 ヒストリックカーを産業文化遺産として扱えとまではいわないが、理不尽ないじめに近い重課を見直すタイミングに来ているのではないだろうか。

【画像ギャラリー】発売から30年経過! 自動車税を優遇してでも守りたいニッポンの名車たち

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