購入後まもなくATの不調があらわれた
今回ご紹介するのはサーフブルーのミニに乗る原 二美夫さん、あづささんご夫妻。お二人がこのミニを購入したのは9年前のこと。それまでは国産車に乗られており、初めてのミニだったそうだ。
「実はミニが好きだったのは私なんです。結婚してから子どもができて普段の足として軽自動車を購入したのですが、本当はミニが欲しかったんです。そのことを主人に話したら、「30歳過ぎてからでいいんじゃない?」と言われて…」と当時を振り返る奥さんのあづささん。
後にその約束をちゃんと果たしたご主人の二美夫さん。念願のミニを購入して、どこに出かけるにもミニを使っていたというあづささんだったが、ATの不調は購入後すぐに現れた。
「エンジンをかけてギアをDに入れてからトルクがかかるまでに2、3秒かかるようになりました。オイル交換したての時には症状が出ないんですが、オイルが劣化してくると頻繁にこの症状が出るようになりました」と言うのは、ご主人の二美夫さん。
ATの不調は、早めの対策が吉という判断から、症状が頻繁になった数年前からキャメルオートで「安心オートマ」を奨められていたそうだが、いったんエンジンが温まって走り出してしまうと調子が良いこともあり、騙し騙しで乗り続けていたのだそうだ。
しかし、症状がさらに悪化してきたことから、去年の秋に安心オートマにすることを決意。さっそくキャメルオートにクルマを持ち込んで点検作業。リフトアップして下まわりを点検したところ、アンダーガードその他にもオイル漏れの形跡はなく、曽根さんは非常に良い個体という印象を持ったそうだ。
「ただ、ATにかかる油圧のチェックをしたら、前進、リバースともに規定値にはるかに届かない数値でした。けれども、ドレインボルトの鉄粉チェックをしたら、これがもう驚くほどキレイな状態。ドラムが削れていなければ再使用できそうな気がしていました」と曽根さん。
岩崎自動車でエンジン&ATを分解修理
1.作業台にエンジン&ATを載せて作業開始。 2.リバースバンドは若干消耗していたが、2速、3速バンドの消耗は少なかった。 3.オイルポンプのクリアランスは0.15㎜のシックネスがスルスル…。 4.ポンプの軸受けブッシュも3倍程度拡大していた。油圧低下の最初の原因はオイルポンプではあるが、これだけでは、オートマ油圧3.5㎏までは下がらない…。 5.プライマリースラストの拡大は大きく、市販品では対応できないので、ワンオフ品で対応。 6.燃焼室のカーボンは特盛状態。明らかなオイル下がりは確認できないが、今回ヘッドをオーバーホールするのでステムシールは交換。 7.今回はハート型ピストン組み込みなのでシリンダーブロックをボーリング。ちなみにシリンダーの現状は、ほとんど消耗しておらず良い状態を保っていた。 8.エンジンとオートマを切り離す。 9.入庫時チェックのドレンボルトもキレイだったので予想通りギヤドラムは問題なし。再使用OK。 10.ブレーキバンドの摩擦材も剥がれは無く良い状態だった。定期的なオイルメンテナンスと確実な暖機運転が行われていた証だ。 11.フォワードクラッチもT&Rクラッチも同様に完全に摩耗して限界を超えてギリギリのタイミングだった。 12.クランクを外しブロックを分解する。 13.安心オートマでは、オイルの通路でもある親子メタルは全部交換する。 14.カムメタルも交換する。 15.カム山に叩かれ続けられたバルブリフターは、現在入手可能な裁量の純正対応品に交換。 16.抜き取ったピストン。今回はハート型ピストンに交換。 17.ここまで分解点検したところ、前進、リバースともに油圧が3.5㎏にまで低下する原因が見つからなかった……。 18.再度点検したところ、オイルポンプからオイルフィルターに繋がる部分のパッキンが欠損しているのを確認。多い事例ではないが、確実に油圧漏れを起こしてしまう原因だ。今回の油圧低下の主犯だ。
今回はハート型ピストン交換で走りもグレードアップ
車体から降ろされたエンジンとATは九州の岩崎自動車へ。安心オートマが完成するまでの間に、エンジンマウントや強化ブラケット、タイロッドエンドブーツといった消耗品、そしてラジエーター&ストーンガードも交換。さらに今回は、エンジンを降ろすついでに街乗りの低中負荷領域において燃焼効率アップが期待できる「ハート型ピストン」に交換することを決定。
今回はハート型ピストンをインストール!
今回の作業では、「ストックヴィンテージ」が独自設計した「ハート型ピストン」をインストール。低・中負荷領域という街乗りでの燃焼効率UPを狙ったピストントップデザインが特徴で、ヘッドの燃焼室を反転したデザインのため1、3番用2,4番用と1台に2種が必要になる5&7ポートスペシャル設計。プラグから遠くなってしまう燃焼室部分を無くし、混合気の燃え残りを減少させる効果があるという。さらにピンハイトを純正プラス0.5㎜の設計とし、スキッシュクリアランスを小さくとることで未燃焼ガスの低減を実現している。
肝心のエンジンとATの方だが、比較的状態が良くギアドラムの再使用も可能なことが判明した。しかし、ATの油圧低下の原因がなかなか突き止められなくて再度点検したところ、オイルポンプからオイルフィルターに繋がる部分のパッキンが欠損していることが判明。珍しい事例ではあるが、これが今回のAT不調の原因であった。
安心オートマに生まれ変わった愛車を駆って、通勤から普段の足に使っているあづささんは、とにかく安心して乗れるようになったことに大満足のご様子。お休みの日にハンドルを握るという二美夫さんは、スムースになったATはもちろん、ハートピストンに交換したことによる出足のトルクの向上で、ミニをドライブするのが以前よりもラクに、そして楽しくなったそうだ。
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