「新車同様」「新車並み」「新車以上のコンディション」という売り文句の意味を、前回はレストアに関して書いてみましたが、今回は「新車以上のコンディション」と謳われる車両について触れてみたいと思います。
まあ屁理屈的ではありますが、「新車よりコンディションがいい」車両って、ないことはないんです。もっと正確にいうならば、新車には絶対にならないけれど、新車時より見栄えの良さ&性能的には上回れるといった感じでしょうか。
これはどういうことかというと、一番新しい生産年のローバーミニでも21年前、そしてローバーという会社がもう存在していない、ということを考えると、当時の新品パーツを使ってフルレストアをかけたとしても、当時の性能や状態を上回れるはずがないからです。純正新品パーツと言っても、ローバーがあった時代に作られたパーツとなれば、もう20年以上が経過してますし、新品未使用でもすでに年劣化が起きているレベルですし。
またローバーがBMWに吸収された’97年以降のミニでは、それまで使われていた純正パーツとは、データにはでてこない仕様違いのものが使われていたりして(故障しやすいと言われるATのオイルポンプが代表的)、新品パーツを組んだとしても新車と同じ性能や耐久性を出すのは困難だと思われます。
ここでひとつ、新品パーツについて。皆さん、「ミニは新品パーツ豊富にありますよね?」と思うでしょうけれど、ミニに関していえば、ローバーという会社自体がないわけですから、純正新品パーツには困らない、というのは都市伝説的と言えます。
実際、現在、純正新品パーツとして流通しているものは、正確には「ローバー純正パーツを作っていた工場で生産されたローバー純正部品と同仕様のパーツ(いわゆるパッケージ違い)あるいはその類似パーツ」か、純正アフター部品と呼ばれる「純正と同形状同仕様の社外パーツ」です。
で、ここでもひとつ、社外純正アフター部品の中には、純正新品部品のクオリティーに達してないものもある(少なくない!?)という事実です。
編集N自身も、乗っていた当時18年落ちの空冷VWビートルや乗っていた当時20年落ちのR107のメルセデス・ベンツ560SLでは、専門店で「社外アフターは純正新品より安いけど耐久性ないからすぐにダメになるよ」なんてよく聞かされていました(まあ当時は値段の安さにつられて社外アフターを選んだこともありますけど)。
そりゃそうですよね。「純正」なんて言葉がついていても、純正パーツの型やデータをメーカーから買ってそのパーツを再生産しているところばかりではなく、そのパーツの形状と材質を似せて作った「リプロ品」(悪い言い方をすればコピー品」が多いわけですからね。
もっともこういうパーツのすべてが性能的に落ちるわけではなく、中にはローバー純正部品より性能的にははるかにいい、なんてものも少なくなりませんし、なにより社外品であっても、「新品パーツ」の多くが手にはいるミニはとても恵まれたクラシックカーです。それに新車以上のコンディションを実現するためには、この純正と同様形状の純正アフターパーツの存在が欠かせませんから。
来週に続きます!
編集N
自動車雑誌編集者歴30年の、カメラマン・ライター・英語翻訳・動画撮影・動画編集、そして雑誌企画制作もこなすハイパーマルチメディアクリエーター。プライベートではミニメイフェアと30プリウス、フェラーリなどを所有。
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