インジェクション車に現れるあるあるなエンジン不調原因
エンジンが掛からない&再始動できない、アイドリングが安定しない、クーラーが効かないなどの症状が出たときに、真っ先に疑われるのがこれら9つの症状。テスターを当てて診断しないとわからないトラブルも多いが、ミニのオーナーなら頭に入れておきたいトラブル知識だ。
タートルトレーディングが教えるインジェクションミニにあるあるな燃料系&エンジン不調系トラブル9
完成度が高いとされる’97年以降のインジェクションモデルだって、もう生産から20年以上が経過するのだから、ちょっとしたトラブルが出るのは当たり前。もちろん定期点検をきっちり受けていれば未然に防げることも多いが、定期点検では見つけられない故障やトラブルの兆候が出るのは仕方のないところ。
そんなときに覚えておきたいのが、インジェクションモデルの特有の燃料系&エンジン始動不良系トラブルのこと。出先でエンジンが掛からなくなっても、エンジンを冷ませばとりあえず動けるトラブルもあるってことを知っていれば、JAFのお世話にならなくても済む。そんな代表的な例がこのコーナーで取り上げる9つだ。
インジェクション車のこういった症例やトラブルは、ミニ専門店ならテスターを当てて数値を読み、不具合のある部分を突き止めることは難しくないが、一般のミニオーナーでは判別がなかなか難しい。でも知識を持っていれば、症状やトラブルの原因を推理したりして、トラブルすら楽しめることもできるから、ガッカリ度合いも薄れるはずだ(笑)。
なお燃料系&エンジン始動不良系のトラブルで主要なパーツが壊れる事態、例えば新品が欠品しているインジェクターのトラブルとか、ECU本体の故障はあまり起こらないそうなので、「そのトラブルあるある」な各種センサー&センサー周辺パーツの不具合を中心に、タートルトレーディングに解説してもらった。
タートルトレーディング工場長
伊野口さん
所沢工場長の伊野口さんにインジェクションモデルの症例を解説してもらった。タートルトレーディングWEBのメカニックブログでは、goo工場長として日々のメンテナンス&チューニングを書き留めている。ミニ情報の宝庫だ。
1.クランク角センサーの劣化
トラブル発生の季節:夏に多い
原因と症状:クランク角センサーがダメになると、エンジン始動不良の原因になる。ありがちなのはガソリンスタンドなどでエンジンを切ったら、再始動できなくなるといった症状だ。エンジンが冷えると始動するようになるので症状が出たことをスルーしてしまいがちだが、交換しておかないと痛い目に合う可能性大。夏場に症状が出る傾向にある。
対策:クランク角センサーの交換
2.サーモスタット不良
トラブル発生の季節:季節を問わない
原因と症状:アイドリングは通常850rpmに設定されているが、サーモスタットが開きっぱなしになるといつまでも暖気が終わらず、アイドリングの回転数が高いままになる。またサーモスタットが開かない状態になってしまうと、最悪オーバーヒートを起こしてしまう。
対策:サーモスタッドの交換。それほど壊れる部分ではないが、もし壊れたら一大事に陥る。
3.燃料ポンプ故障&フィルターのゴミ詰まり
トラブル発生の季節:夏に多い
原因と症状:燃料ポンプが壊れるトラブルは夏に起こりやすい。燃料ポンプのモーターがダメになって燃料を吸い上げなくなるため、エンジンがかからなくなる。燃料の温度が上昇することも原因のひとつ。
対策:燃料ポンプのアッセン交換。そんなに頻繁に壊れるところではないが、新車から1度も燃料ポンプを交換していないという車両は気を付けたい。クラシックカーにありがちな燃料フィルターの詰まりは、定期的に車検ごとや2万kmごとなどに交換している場合はそんなに不安はないそうだ。
4.水温センサー周りのトラブル
トラブル発生の季節:冬に多い
原因と症状:エキマニの真上に水温センサーがあるため、熱害で水温センサー不良が起こりやすい。とくにコネクター接触不良や断線などが多い。エンジンの振動でカプラーが外れたり、導通したり導通しなかったりといった接触不良も出やすい。症状は夏場にはわかりにくく、外気温が下がってくるとエンジンが始動しにくくなる。コネクター不良が起こると、ECUが60度でフューエルセーフモードに入り、始動時の燃料増量がかからないので、寒い時期は始動不良が起こる。またインジェクション車では通常88~90度でエンジン水温を保つのだが、カプラーが外れてECUが水温60度と認識してしまうと暖気終わらない状態になる。
対策:多くの場合、カプラーのパーツ交換またはセンサー交換でトラブルは解消する。
5.バキュームホースの不良
トラブル発生の季節:季節を問わない
原因と症状:スロットルユニットとECU、スロットルユニットとエアクリーナーをつなぐバキュームホースが破損したり外れたりすることで、エンジンの調子が不安定になったり、始動不良になったり、黒煙を吐いたりする。これは合計4本あるバキュームホースのジョイント部分のプラスチックが熱害や振動、ガソリンが滲みてくることで割れたり、外れたりするため。
対策:バキュームホースを新品に交換する。比較的起こりやすいインジェクション系トラブルだ。
6.センサー類のトラブル
トラブル発生の季節:季節を問わない
原因と症状:一番上のECUボックス内にバキュームセンサー(マニホールドマップセンサー)、中央の黒いパーツがスロットルポジションセンサー、下段右からO2センサー、水温センサー、その左の緑のパーツが吸気温度センサー、その左隣のコードがクランク角センサー。センサー類のトラブルは全年式で起こる。いずれもエンジン不調や始動不良の原因になる。
対策:テスターを繋いでみると、どの部分が悪いのかほぼ特定できる。故障したセンサーは交換する。
7.ハンダの剥がれや断線のトラブル
トラブル発生の季節:季節を問わない
原因と症状:上の写真がモジュールリレー、下がスロットルのバタフライを動かすステッパーモーター。どちらも基盤のハンダにクラックが入るトラブルが多い。断線することもある。モジュールリレーではフューエルポンプリレーやメインリレーなどに悪影響を及ぼすし、ステッパーモーターのリレーにクラックが入るとアイドリングが安定しなくなる。
対策:トラブルが発覚したらどちらもアッセン交換。
8.クーラーのサーモアンプ故障
トラブル発生の季節:季節を問わない
原因と症状:クーラーコンプレッサーのオンオフを制御するサーモアンプが壊れる。これが不良になると、クーラーがカチカチとオンオフ状態になり、アイドリングが頻繁に上がったり下がったりする(アイドルアップを頻繁に行うようになる)。
対策:左側のクーラー吹き出し口の奥にあるサーモアンプを交換する。
9.ブレーキサーボからエアを吸ってしまうトラブル
トラブル発生の季節:季節を問わない
原因と症状:アイドリングが不安定になるトラブルでときどき発生するのが、ブレーキサーボからの負圧でエアを吸ってしまう症例。黒煙を吐いたりする。
対策:バキュームサーボ交換。
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※こちらの記事はSTREET MINI 2020年 4月号に掲載されていたものです。