キカキを知るべし…
キャブレータの話を進めながらも、キャブレータが一体どんなものか、その理屈が分からなければ良いも悪いもないし、いきなり魅惑の某といわれても、見当が付かないのではとする。では解説を…
ここでキャブレータについての解説をしようと思う。前段、ミニのデビュー当時はキャブレータだった旨を記したが、その後どのような変遷を辿ったのかを追っておこう。
ミニにキャブレータが使われていたのは1992年に電子制御のフューエルインジェクションを採用するまでである。モデルでいえば、1991年の初頭に販売開始した『ローバーミニクーパー1.3』やそれまで継続販売されてきた1000ccエンジンのモデルが最後のキャブレータモデルということになる。以降、2000年までは電子制御フューエル・インジェクション(以下、インジェクション…)のモデルとなり、実質的にキャブレータモデルの入手はかなり困難になっているのが現状だ。
では、まず初めに『キャブレータ』と『インジェクション』の構造的な違いを説明しておこう。上に掲載したふたつの図を見比べながら進めていこう。
標題に“キカキ”と書いたのだが、これは“気化器”のこと。要するに、燃料であるガソリンを空気と良い具合に混ぜ合わせて燃えやすい“混合気”を作るためのシステムということだ。適正な比率で燃料と空気を混ぜ合わせてエンジン内部に送り込み、ボワッと火をつけるわけだ。そのための混ぜ合わせをする気化器がキャブレータであり、インジェクションということ。
両者の大きな違いはインジェクションがコンピュータのコントロールによって空気の量に応じた燃料を噴射するアクティブな構造(左側の図)であるのに較べ、キャブレータはエンジンが吸い込みたいという力(シリンダ負圧という…)で燃料を吸い出しながら空気を流入させる、パッシブな仕組み(右側の図)になっているということ。最終的な目的は同じなのだけれども、燃料をマネージメントするアプローチは正反対といっても良いのだろう。
どちらの方式が良い、悪い、といった単純な軍配は上げられないし、その判断は諸兄に委ねてしまうけれども、それぞれに言い分はある。インジェクションが採用された大きな理由はエミッションコントロール。つまり、環境を考えた排出ガスの浄化や昨今は低燃費性も重要になってきていた。そいういったストックのセッティングが面白い走りができるかと問えば、やはり難がある。ストイックに走るためのシステムだ。
対して、キャブレータ。もちろん社会的なルールは同様に課せられるけれども、なにぶん機械制御なので、厳密にできるものではない。ある程度の特性として、マージン幅が大きいということになる。いきなり止まってしまったり、パワー不足になるのは危険が伴うので、フェイルセイフとしてちょっとだけ廻って、少しだけ力が出せるようになっているわけだ。加えて、セッティングをオーナーレベルでも調整することが可能だから、いじる楽しみも得られるといったおトクな面もある。
キャブレータをヘタにいじってしまうと、返って逆効果になってしまうことも多々あるけれども、メインテナンスやセッティングに手を出せること。さらには、余力のあるキャブレータに換装することで走りのフィーリングを変えることができるのも大きな魅力といえる。上段では、SUキャブレータとウェーバーツインバレルの解説もしている。どうだろう、そろそろキャブレータに惹かれてきたのではないだろうか……。
[協力]MINI DELTA
http://www.mini-delta.co.jp