黄金色に輝くミニに製作者であるオーナーが与えた名前は「キンタマ号」。
一見すると、その派手な色合いに目を奪われがちだが、このミニの凄味は、その仕上げの完成度の高さにこそあるのだ。
photo=YUNO
text= 清原直樹 naoki kiyohara
Special thanks=Becheree tel.072-921-8997 http://www.becheree.com
Kintama GO
今回ご紹介するのは金色に輝くスペシャルなミニだ。91年式のキャブクーパーをベースに丁寧に仕上げられた黄金色のボディと、ボディカラーと調和するように設えられた内装を見て、このクルマが凡庸なカスタムカーでないことはひと目で分かる。その第一印象は、もちろん間違ってはいないのだが、視線を近づけてみるとディテールに潜むというよりも、そこに込められた作り手のこだわりに驚かされる。
例えばオーバーフェンダーを例に取ると、約1cmほどの耳が付けられており、美しいラインを描いている。これを実現するためには1枚板のオーバーフェンダーの貼り付けでは不可能と判断して、幅約4cmの鉄製のピースを製作し、それを30枚ほど数珠繋ぎに並べて微妙なアーチラインを成形しているのだ。しかし、これは説明を受けて初めて分かることであって、全体のデザインと調和しているので、特別に目立つわけではない。
実は、この突飛ではない全体に調和した仕上がりこそが、このミニが目指したものなのだ。
「ミニのカスタムのやり方を見ていて思うのは、そこを強調するあまり、どうしてもチグハグな印象があります。たとえばメーターまわりや足まわりを見ても、後付け感が強い仕上がりが多い。クルマをイジる人は、どうしてもそこを見て欲しいという心理が働きがちですから、そうなってしまう気持ちはわかります。でも私が目指したのは、もしあの当時、メーカーが頑張って作っていたらこういうスタイルもあったかな、と思わせるような仕上がりです」と、いうのは、このミニを製作した東大阪のプロショップ「Becheree」のO代表。
さらに、フェンダー加工だけではなく、ピラーのスムージングやボディラインを際立たせるアンダーコートのチッピング塗装など、よく見ると非常に手が込んだボディメイクが施されていることが分かる。そして、目が肥えたファンの人はすでにお気づきかも知れないが、このミニに装着されているホイールに注目していただきたい。
このホイールはミニ1100に採用されていたエクサクトン製の純正ホイールで、今ではめったにお目にかかれない希少なものだ。
「これカッコいいでしょう? 実はこのホイールを入手したことが、このミニを作るきっかけになったんです。このホイールに似合うフェンダー、全体のフォルム、といった具合にこのホイールを活かすことを考えてクルマを仕上げました」とO代表。
内装もゴールドカラーのボディ色と合わせてキャメルカラーに統一。内装のキモはシートだ。実はこのシートは’60年代ジャガーXK用のリプロ品で、英国から購入したものだそうだ。この色合いが気に入ったOさんは、内張りもこのシートに合わせるために染色し直したそうだ。
ボディカラーに合わせてキャメルカラーで統一されたインテリア。内張りも既存のカラー生地ではなく、新たに染色したものを使って丁寧な手作業で仕上げてある。
よくミニは一台一台違うという話を耳にする。確かにその通りではあるものの、よく見ると使われているパーツはある程度限られていて、それらの組み合わせ方が違う、というのが実情ではある。そうではないミニを作るために手間も時間も惜しみなく注いで完成させたのが、このミニなのだ。