HさんのMk1クーパーSのレストア記録最終章、緑ミニとの比較編です。インジェクションエンジンのチューニングを得意とするStock VintageになぜかFIAボディのミニが2台揃いましたので、そりゃあ比較したくなりますよねw
こちらはHさんの白ミニ、ボディカラーはオールドイングリッシュホワイト/ブラックです。1967年型の1275Mk1クーパーSをベースとして、英国Awens Fabricationにてレストア&ビルドされた個体です。ボディはFIAのAppendix Kに準拠して補強されてます。供給はボディ本体とF/Rサブフレームで、足回りや補機類は元々使用していたものをSVにてオーバーホールして組み込む予定です。
こちらは僕の緑ミニ、ボディカラーはウィローグリーン/オールドイングリッシュホワイトです。1964年型の850 Mk1をベースとして、三和トレーディングさん監修の元、英国のビル・ソリスさんの手によってレストア&ビルドされた個体です。ボディは同じくFIAのAppendix Kに準拠して補強され、足回りや補機類もそれに準拠したものが選ばれ組まれた状態で販売されてまして、購入時はそのまま英国のヒストリックレースに参戦できる構成でした。国内のSBoM参戦ということで、ブレーキ系とかペダル系は慣れたパーツに交換してしまいましたが。
ちなみにAppendix Kを厳密に適用すると66年以前の車両という制限がありまして、緑ミニはそれを満たすベース車両が選ばれてます。国内でMk1ベースのレース車両として楽しむならば関係ないですが、そこの拘りも含めてこのボディの魅力ではあります。
白ミニのロールケージ。
緑ミニのロールケージ。同じレギュレーション準拠ですから、当然ながら基本的な構成は全く同じでした。
フロアへの固定は6点、全てフロアに補強を当てた上で溶接で固定されてます。
が、細かい部分がいくつか違ってました。Aピラーのケージからダッシュボードの下部に向かって枝が伸ばされてまして、ボルト留めで固定できるようになってます(留まってませんでしたが)。
Bピラーの斜行バーからも枝が伸ばされていて、Bピラーとボルトで固定されてます。フロアだけでなくA/Bピラーとも固定することによりボディ剛性は飛躍的に向上しますが、67年型ベースということでレギュレーションを超えて追加の補強をしてくれたのでしょうか。
あと、後席両サイドのポケット部分が組まれてませんでした。パーツとして同梱されてましたので、後で組み付けることになると思いますが、その意図はよく分かりません。
シートを固定するベース部分の構造です。白ミニは丸パイプで組まれてます。フロアとの接合部は全て補強材が溶接されてます。
緑ミニは(シートが組まれているのでわかりにくいですが)角材をフロアに溶接して構成されてます。シートベルトのアンカーの位置も微妙に異なりますね。
緑ミニには運転席に左側にスイッチボックスがありますが、白ミニにはありませんでした。これは後から追加できる部分ではありますので、Hさん次第でどうとでもなる部分ではありますが。
リアのトランク内部です。こちらは白ミニ。
緑ミニです。
リアのバルクヘッドとホイールハウスとの間をつなぐ補強材は両車で共通ですが、白ミニのフロアには縦方向の補強が追加されてます。ひょっとすると補強ではなく、大容量の角形燃料タンクを搭載する場合のベースかもしれません。興味深いです。
白ミニのエンジンルーム。
緑ミニのエンジンルーム。基本的に同じ構成に見えますが、実は違いがあります。
白ミニの左側の隔壁。
緑ミニの右側隔壁。緑ミニは下側がカットされています。何故カットされているのかといいますと、
白ミニのフロントサブフレームはノーマル形状ですが、
緑ミニのサブフレームはタワー上部がカットされて2cmほど高さが低くなってます。
この加工によってサブフレームをボディに対して相対的に高い位置に固定し、フロントの車高を2cmほど下げているわけですね。普通は車高を下げるとサスペンションのロアアームの角度が水平に近くなるためにロールセンターが下がり操縦性に悪影響が出るのですが、フレームの搭載位置を変えて車体ごと車高を下げることでロアアームの角度変化を最小限にして車高を下げることが可能になってます。おそらくレースで培ったノウハウであり、レギュレーションの範囲の中で大胆に手を加えることが出来た部分なのかなと想像しています。
この構造の背反は、通常の位置に牽引フックが取り付けられなくなることと、エンジンの搭載位置がボディに対して相対的に上がるために、8ポートヘッドの場合は燃料のディバリーパイプがボンネットフードと干渉して閉まらなくなること、でしょうかw
あとは緑ミニはバルクヘッドの穴から車高調整が出来るように加工されてますが、白ミニはそうはなっていないように見えます。
ここからは機能というよりはボディの仕上がりに関する内容になります。
ドア開口部のケージに当たらないよう、薄く加工されたドアポケット。
緑ミニも同じ形です。機能的には徹底的に補強しつつ、Mk1らしい部分は残すというメリハリが嬉しいです。
白ミニのドアには元々あった水抜きの穴がしっかり残されてます。
が、実は緑ミニのドアの水抜き穴は塞がれておりました。・・・スプリントレース専用って事で割り切ったのでしょうかねw ですが、実際のところ雨に降られてしばらくすると窓のレール部分から水が溢れて室内側に浸水してくれたりします。いつかは修正しておきたいと思う部分です。
白ミニのルーフ。排水のための穴がきちんと開いております。
緑ミニのルーフ。・・・パテで埋まっております(涙)。あと、Mk1独特の構造であるヒサシが撤去されてます。
白ミニのエンジンルーム開口部の雨樋。新品パーツを使って組んでいるためしっかり溝があります。
緑ミニの雨樋。パテで埋まってますし、溝も浅いです。
ちょっとした仕上がりの違いに過ぎないのですが、実用上の影響はかなり大きかったりします。
どういうことかと言いますと、雨天時にボディ上面を流れてきた水がエンジンルームの雨樋を超えてエンジンルーム内に流れ込み、車高調整用の穴を通って室内に浸入するというのが緑ミニの雨漏りの真相だったりします。先日のトラックディでもそれでえらい目に遭いました。しばらく前にシャワーで水をかけまくって浸入経路を突き止め、対策として車高調整用の穴をテープで塞いでおいたのですが、今年の春に車高調整した際にP師がテープを剥がしてしまったようで、それに気づかずに雨の中を走り出してしまって大失敗しました。
話を戻しつつ結論ですが、
Awens Fabrication製のボディは、ロールケージの固定方法や補強の追加などで一工夫が追加されているように思えます。また、レストアの段階でボディパネルの多くを交換しているために細部の仕上がりがしっかりしてますね。これは羨ましい限りです。
一方、Bill Sollisさん制作のボディは、ロールケージの固定方法は基本通りである一方、フロント部分を加工して車高を下げたり、接地状態で車高調整できるようにするなど実戦に即した加工が加えられています。
ボディのレストアは最小限に留めた印象で、良くも悪くもベース車両の状態をそのまま引き継いでいる印象です。あとは雨とか知らんし、と言わんばかりの思い切りの良さを感じますw
他のビルダーの製品と比べることで緑ミニに込められた思想が想像できて、僕としても得がたい機会でした。いろいろ問題にも気づかされましたがw、そういう思想のものとして付き合っていくつもりです。ただ、日本の気候を考えるとドアの水抜き穴はどこかのタイミングで追加したいですね。せっかく綺麗な仕上がりなのに、水を溜めることで錆びさせたりしたら悲しいですからね。
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