7月13日、名古屋。夕食を食べながらのインタビュー取材を終え、川崎に向けての帰路についた。「泊まっていきゃぁ、良いのにぃ」とはいわれたものの、翌日に撮影の予定があるので、ていねいにご辞退である。
で、ことは上郷サービスエリアで起きた。休憩を済ませて、アイドリングしながらメールを一件送信。さて出発とセレクタをドライブにしても、クルマがピクッとも動かんではないか。「エンジンはかかっているよな……」とメーターに目をやると、油圧警告灯がオレンジも鮮やかに点いているじゃないか。やっちまった、である。
トラブルの原因はおおよそ想像がついた。過去に救出騒ぎが一回、未遂も一回、同じような状況になっていたから……。オイルクーラーのホースが破けたんだろうな、ということだ。とはいえ、この状況がサービスエリアの駐車場で起こったことはありがたい。道端ではやりきれんから……。なかなか編集子の愛車はオーナー想いなのである。
ともあれ、起きたことには対処しないとならないから、最近老化著しいノーミソでいろいろ考えるわけである。
「たぶん、オイルホースが裂けて油を吹き出したんだ…」
「暗いし、雨が降っているからよく見えないけど、クルマの側に行くと足がツルツル滑るからほとんど全部でちゃったんだろうな…」
「ホースをバイパスできれば、応急処置はできるんだよな」
「上郷だからガソリンスタンドがある。オイルを買うことはできるか…」
「サービスエリアの駐車場だし、工具は積んでいるから作業ができないわけじゃないな」
「でも、今の状態(夜の大雨…)でどこまでできるだろうか…」
「もし、やってダメだったら、ダメージ大きいな。原因がホースじゃなかったら始末が悪いし、もう夜遅いからなぁ」
と、あがいても良い結果を生まないぞ、と判断して、自動車保険のロードサービスにコールである。まぁ、そこでもいろいろと擦った揉んだ。いちばんヤバかったのは、保険サービスの担当は「今は新型コロナ感染症のことがあるので、運転手の方はローダに同乗できません」だと。これには参った。自宅までは300km以上、もう電車も使えないような時刻、明日の撮影に使う機材はこのクルマに積んである。レンタカーか……
電話口で暴れてもなんの解決にもならないので、オペレーターさんに「ローダーのドライバーさんと話させてくれ」と頼み込んだ。結局は、保険サービスが話を付けてくれて、故障車便乗で自宅まで帰る算段がついた。
近くで日中だったら、ミニショップに電話を掛けまくって何とかお願いしてしまうところなのだが、さすがに『上郷』→『川崎』は遠いし、日付が変わりそうな夜中じゃ、電話にも出てもらえないだろうな。保険のロードサービスは最大100kmまで、超過分は実費精算だ。1km当たり7千円……、しかも現金。涙ものである。
そんなこんなで、自宅に帰り着いたのは早朝。そのまま機材を積み替えてロケに向かったので、仕事には穴を開けずに済んだ。やれやれ、だ。
田代(G)基晴
10月号より本誌編集長:ミニより1歳年下の1960年生まれ。ミニ・フリーク誌のスタートからどっぷりミニ漬けの人生。現在はフリーランスの写真家、編集者として活動。趣味の伝道師を目指し、日々精進している…