MINIのエンジンは吸排気の構造上インジェクションとの相性が悪いです。
最も深刻な問題が4気筒に対し吸気が2つ、この2つのポートで各2気筒を
まかなうという事自体は単に抵抗が増えるくらいの問題ですが、
点火順序1-3-4-2が基本のMINIでは
それぞれの各ポートの2シリンダーのサイクルのズレが180度になってしまう事で
等間隔の吸気が出来ないという特徴があります。
(説明を短くしたい為・・・そういうものだと理解下さい)
この為各シリンダーに供給される燃料に偏りが生じます。
具体的には1番4番が少なくなる傾向です。
この現象はインジェクション仕様車は特に現れます。
これを克服する為にローバーのメーカーが行った方法が
シングルインジェクターを出来るだけ遠い位置に配置する方法だったと思います。
マニホールドを長くしスロットルバルブは1つ、そのバルブよりさらに手前にインジェクターを
配置する事でキャブ機構にも似せる。
こうする事でインジェクション制御と5ポートエンジンを上手に合わせこんだ仕様です。
付け加えると吸気の距離を稼ぎ燃料と空気が良く混ざるようにして
良い混合気を作る事で各シリンダーへのガソリンの偏りを小さくします。
このように純正の吸気システムは考えられているのですが
細目で長いマニホールドはパワーを上げる為には容量が不足する為
私はマニホールドの内径拡大を進めてきました。
多少のドライバビリティー悪化があるもののパワー向上には貢献してくれました。
この頃から各サーキットで1.3iがキャブクーパーに肩を並べる走りをしてくれる
ようになったと感じました。
しかしドライバビリティーが悪化した原因は無視してはならず
原因は混合性能が低下した事だと考え、コンプレッションを
上げる事で燃焼効率及びそれに伴う吸気性能向上を得る事で
良い混合気も生み出す事を狙いました。
結果は良好でした。
エンジンの吸気音は甲高くなりサーキットでは更に速さを出しました。
ここまでの結果から1.3iのマニホールドはサーキットを速く走る為には
少々抵抗になっている事が判り、より良い仕様を模索しました。
次に行った仕様が英国SC社がフルコン仕様として世に出していた
シングルスロットル+SUマニのサイドドラフトKITからヒント頂いた
1.3i純正スロットル+SUマニのサイドドラフト仕様でした。
結果からいいますと基本性能が高いエンジンとのマッチングは高評価。
特に6000回転以上の高回転域では純正形状を上回る性能を発揮、
しかしエンジン基本性能がやや低い場合は中間トルクの低下が目立ち
サーキットでのタイム更新に繋がらないケースも見受けられました。
ただSUシングルマニの限界性能がまだ上にある事に着目し、
次に最大パワーを追求する方向に考えがシフトしました。
ここで登場した方法がインジェクターの位置の変更です。
HIBの登場です。
このパーツとSUシングルマニの組み合わせでこれまでの当店記録98馬力
を大きく練り替え120馬力まで吸気が付いてくる事が判明出来ました。
当然ですが純正ECU仕様に不足する燃料は可変プレッシャーレギュレータ追加で
行うだけの単純制御。関東のレースレギュレーションにも合致する仕様。
120馬力まで絞り出せるエンジンは1380cc 排気量が大きく、高めに設定した
コンプレッションのエンジンでは、低中速域でも高い吸気性能(流速)がある為
ドライバビリティーの悪化の症状は抑えられてしまいます。
HIB登場のお陰で、エンジン仕様によって街中でも乗りやすい120馬力の1.3iが実現できました。
しかしここまでも1.3iの抱える燃焼バランスのリスクは常に気にしていました。
気にしていた結果判った事は、
SUシングルマニは純正マニホールドより高回転時燃料の偏りが非常に少ない。
この理由もあり高回転時の効率を上げているのかもしれませんが
実際のところはよく解っていません。
ただ高性能な1.3iエンジンにHIB+SUマニは非常にお勧めだと自信をもって言えます。
1.3iをここまで進化出来た事に内心は大変満足していました。
・・・しかし・・・
ただあと1つどうしても試してみたい事が残っていました。
それは1.3i(Spi)のツインスロットル化でした。
これをやりたかった理由は主に2つで、
1つ目はツインスロットルによるパワーアップ化
しかしこの目論見は達成できるか分らなくなりました。
理由はHIBサイドドラフトKITがあまりにも良い結果を出した為
それを超える想像ができません。しかし排気量を1460ccまで上げた時に
差を生み出す事が出来るかもしれません。
2つ目は前代未聞の仕様で1.3iを「普通に」走らせたい願望を
叶えたい。できればエアコンも普通に使えて見た目も音も
楽しいクルマにしたいと考えています。
個人的には実は2つ目の理由を大切にしています。
お気に入りの車にカッコいい部品付けてツーリングやミーティングに参加。
これもチューニングの醍醐味であり・・・むしろショップに最も求められている
ことのような気がします。
ツインスロットル化に伴う1.3i制御での弊害は頭の中では出来上がっています。
きっと簡単ではないと思います。
でも何とかクリアする為頑張ります。
1.3iのツインスロットル化実現の為の前段階として
どうしても必要と考えていたテストがありました。
1.3i用にデザインしたツインスロットルボディを使用して
オーバーラップの大きいカム仕様をツインインジェクターで走らせる事でした。
5ポートにとっては相性が悪いとされている組合せです。
これである程度の成果を出す事が出来れば5ポートインジェクションへの大変良い
フィードバックとなると考えたのです。
結果は良好でした。一番知りたかった各気筒の燃焼バランスが
AF値の他にヘッド分解時にも非常に良かった事が確認出来ました。
参考までにサーキット走行をした際の動画をご紹介します。
【レース車両:70号車 ドライバー:高橋選手】
ようやく1.3iツインスロットル化計画のスタートラインに着く事が出来ました。
開業当初から大切にしてきたコンセプトでもあります。
1.3iチューニングを盛り上げ為の本番テストを開始します。