今につながる「スペシャルティカー」のジャンルを生み出したのは、フォードのマスタングだ。これ以降、時代を先取りしたスタイリッシュなルックスと優雅な味わいの2ドアクーペが、スペシャルティカーと呼ばれるようになる。
日本では1970年代から流行した。特長的なのは、目を引くファッション性の高さに加え、優れた走りの性能も要求されることである。
このスペシャルティカーが、デートカーとして大ヒットしたのは1980年代だ。バブル期の80年台後半に頂点を極め、ミニバンやクロスオーバーSUVが台頭する直前の90年台前半まで、我が世の春を謳歌した。
今では絶滅危惧種になっている。だが、チャンスがあるなら、もう一度乗ってみたいと思う魅惑のスペシャルティカーを5車種を選んでみた。
文/片岡英明
写真/HONDA、NISSAN、MAZDA、TOYOTA、SUBARU
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■ホンダ プレリュード(2代目)
プレリュードは、ホンダで初めてのFFスペシャルティカーとして、1978年11月に登場した。2+2レイアウトの正統派ノッチバッククーペだ。
一部グレードを除き、電動スライディングルーフを標準装備し、贅沢なコノリーレザー製のレザーシートとインテリアもオプションで用意されるなど、話題をまいている。
が、性能的にライバルに見劣りしたし、デザインもスタイリッシュと言いがたかったから、日本ではヒット作になっていない。この反省にたって開発され、送り出されたのが2代目のプレリュードだ。
ボディは初代より大きく押し出しの強いデザインとなっている。ロー&ワイドのプロポーションに加え、ノーズを低くし、その先にリトラクタブルヘッドライトを配した。
メカニズムにも、ホンダの最先端技術を積極的に投入している。FF車としては独創的なダブルウィッシュボーン式サスペンションをフロントに採用し、エンジンはES型と名付けた新開発の1.8L直列4気筒SOHC3バルブ(CVCC-II)だ。
日本で初めて4輪アンチロックブレーキをオプション設定したことも話題となっている。
2代目プレリュードは、1982年11月に登場したが、FFの高性能車はヒットしないというジンクスを覆し、販売を伸ばしていく。デートカーというジャンルを確立したのも、このプレリュードだ。
1985年には2LのDOHC4バルブエンジンを積む2.0Siを投入。性能にこだわる走り屋をも魅了した。日本に加え、北米を中心とする海外市場でも大ヒットを飛ばしている。
運転感覚も新鮮だった、デートカー、カップルズカーとして一世を風靡した2代目プレリュードなら、もう一度ステアリングを握ってみたい。
■日産 シルビア(5代目)
ギリシャ神話に登場する美しい女神の名前を冠したシルビアが、本来の輝きを取り戻すのは1988年5月に登場した5代目のS13系シルビアの時である。
知的な20代後半のデート世代をターゲットに開発され、メカニズムにも新しい技術を積極的に導入。駆動方式は前輪駆動が主流になっているが、後輪駆動のFRを踏襲し、気持ちいい走りにこだわっていた。
エクステリアは女性にも似合う優雅なシルエットだ。研ぎ澄まされたファッション感覚とセンスのよさを感じさせた。Sパッケージは量産車としては世界初となる、4灯式プロジェクターヘッドライトをオプション設定している。
ライムグリーンのツートーンカラーも粋だ。デジタルを加えたハイブリッドメーターやフロントウインドーディスプレイの採用も話題を呼んでいる。
走りの実力も際立って高い。リアサスペンションをマルチリンクとし、4輪操舵のHICAS-IIをオプション設定した。
その痛快な走りは、多くの自動車メーカーのエンジニアがお手本としたし、実験ドライバーの育成にも役立っている。
直列4気筒DOHCエンジンには、インタークーラー付きターボも用意されたが、自然吸気エンジンでも操る楽しさは変わらない。デザインがいいだけでなく走りの質感も高かった5代目シルビア。
FRスポーツが不毛の時代の今、この名車にもう一度乗ってもらいたいと思う。運転する楽しさの概念が変わるはずだ。
■マツダ ユーノスコスモ タイプE(4代目)
バブルの絶頂期、マツダは販売チャンネルを一新し、「EUNOS」を立ち上げた。そのリーダーとして、1990年春に送り込んだのがロータリーエンジン搭載のユーノスコスモである。
贅を尽くしたプレミアムスペシャルティカーで、全幅は世界基準の1795mmだ。2+2レイアウトの高性能スペシャルティカーで、時代の先端をいくハイテク装備も数多く採用した。
インテリアはゴージャスな造りだ。自発光式の電子アナログメーターを装備し、タイプEはオーストリア製の本革シートを奢っている。イタリア製の天然木をインパネの化粧板にあしらい、20BタイプE・CCSは量産車初のGPSナビを採用した。
パワーユニットもすごい。ロータリーターボだけの設定とし、2ローター・ロータリーの13B-REWに加え、量産車としては世界初となる3ローターの20B-REWシーケンシャルターボを用意している。
それまでに味わったことのない異次元の加速を見せ、高回転のパンチも格別だった。この感動と上質な走りをもう一度味わってみたい。今の技術で作れば、燃費だって悪くないはずだ。
■トヨタ スープラ(4代目)
スープラは、北米市場をターゲットに開発された直列6気筒エンジン搭載のスペシャルティカーだ。日本では第2世代となるA80系スープラは、1993年に誕生した。
運動性能を高めるためにグラマラスなクーペボディを採用し、フェンダーもワイドだ。また、エアロダイナミクスも徹底的に磨き込み、エアロパーツもカッコいい。GZとSZでは脱着可能なエアロトップも選べる。
パワーユニットは3Lの直列6気筒DOHCと、電子制御スロットルシステムを採用した2JZ-GTE型2ウェイツインターボだ。トランスミッションは、ゲトラグ社と共同開発した6速MTを主役とする。サスペンションは4輪ともダブルウイッシュボーンで、トルセンLSDも組み込んだ。
自主規制のために最高出力は280ps になっているが、強烈な加速を披露した。マイナーチェンジ後のスープラは、17インチタイヤや大容量のブレーキシステムだから、自慢のハンドリングにも磨きがかかっている。
サスペンションに手を入れた後期モデルは、コントロール性も大きく向上した。可変吸気システムなどの導入により、エンジンの洗練度も高められている。
最新のスープラも魅力的だが、ドライバーが操っている実感が濃厚なのはA80系スープラだ。デザイン的な好感度も高いから、あえて今の時代に2代目スープラに乗ってみたいと思うのは、ボクだけだろうか!?
■スバル アルシオーネSVX(2代目)
スペシャルティカーとは無縁だったスバルは、1985年初夏にアルシオーネを発表し、発売した。が、期待の北米市場では今一歩の評価にとどまっている。そこでプレミアム性の高い4WDスペシャルティカーの開発に乗り出し、デザインをイタルデザイン代表のジョルジェット・ジウジアーロに依頼した。
最初の計画では小型車サイズだったが、バブル期でイケイケの風潮が強かったためにワイドボディとし、パワーユニットも4気筒ではなく水平対向6気筒DOHCを選んでいる。こうした経緯を経て1991年9月に誕生したのがアルシオーネSVXだ。
デザインは今でも通用する流麗なフォルムで、ラウンドしたキャノピーも美しい。搭載する3.3Lの水平対向6気筒DOHCは無類にスムーズで、高回転はパンチがある。
電子制御の不等&可変トルクスプリット4WDに、ビスカス式LSDを組み合わせ、ハンドリングも軽やかだった。スタビリティ能力も高い。
4気筒エンジンが全盛の今、気持ちよく回り、音色もいいボクサー6は魅力的な存在と映る。ハンドリングも軽快だから、今の技術を加えて磨きをかければ完成度は一気に高くなるはずだ。デザインもいいから、もう一度乗ってみたいという思いが強くなる。
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