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トランスジェネレイション Vol.4 「旧き佳き日の 自動車趣味… 」

過去から引き継がれてきた趣味の環境を新たな世代の価値観で再発信するトランスジェネレイション。故きを温ね、新しきを知る…… ライフスタイルの変容を求められる今だからこそ自分たちのミニライフをアップデートして、さらなる愉しみの領域に邁進して欲しい……。『林ガレージ』林 励(はやしれい)氏の第三弾は草創期のクーパーSにどのような想いを馳せているのか、いまどういった付き合い方をしているのか話を聞こう。

 シリンダブロック、クランクシャフト、コネクティングロッド……、50年前の方が薄くて軽くて強度が出ているということは、材質と焼き入れ加工が優れているということ。つまり、コストが掛かっているということになる。例えばクーパーSのクランクシャフト、EN40Bは、当時のF1クランクシャフトと同じ材質、加工方法が用いられている。クーパー、クーパーSは正式にメーカーが生産をしているものの、その主たる目的は競技に出して勝たせるためのクルマだから、奢ったマシンであったことは間違いない。

 当時は売値で泣いてでも良いものを出す。とくに、クーパーやクーパーSといったエボリューションモデルは看板背負っているのだから、コスト度外視的な部分はあったのだと思う。クーパーSは英国で新車販売した価格はおおよそ50万円。そんなにびっくりするような価格じゃなかった。クーパー系車輌で儲けるつもりはなかったんだと思う。もしかしたら赤字モデルだった可能性もあるんじゃないだろうか。半世紀前にメーカーが心血を注いだ競技活動の広告効果への期待は、それなりに高かったんだと思う。

 クーパーSのすべてが良いわけではなくて、中には出来の悪いものもある。例えば、シリンダヘッドなどは高額で取引されることもあるけれども、MkIのヘッドはダメなところがあって、いってしまえば欠陥品だよ。AEG163は絶対壊れる。ダメになる前に外して保管して、12G940に換えた方がクルマのライフは長くなるよ。ある重要な部分の水路を割愛、中子自体がそうなっている。バルブやポートを大きくすると水路が保てなかったからだろうね。だからバルブの間にヒートスポットができてしまうんだよ。クーパーSの素養がレーシングマシンにあることが伺える事実だね。ワンレース使い切れば良くて、パワーを優先したということだ。


 バルブサイズやポート形状、ヘッドのシステムを大きくしていくと水路が狭くなっていくのは相反する条件なので仕方のないこと。何を目的に仕様を決めるか、だね。結果、AEG163に関しては、50年使える部品にはならなかったわけだ。問題箇所は概ね想像はつくだろうが、興味のある向きは探求していただきたいものである。クイズだね。

 ミニの2番、3番の間はウィークポイント。そこをどう保つかがチューナーの知恵の絞りどころ。例えば、32GTRのRB26はブロックのデッキ面よりシリンダスリーブが3/100mmくらい持ち上がって、それをヘッドガスケットでグッと押し付けてる。ボクのレーシングカーもそうなっている。+20のピストンにしてスリーブを入れて、5/100mm持ち上げてる。もちろんガスケットを薄くするようなことは絶対しない。圧縮を稼ごうなどと考えるのはアウトだ。圧縮を高くするのはライフを短くするので、昨今のチューニングは圧縮は上げないのは定石だよ。とくにロングストロークだから圧縮は抵抗になる。ノーマルで充分、970のショートストロークでさえ10・1:1なのだから……。昔のダウントンチューニングなどは圧縮比が高い。ステージ3になると16・4ccくらいで圧縮比は実に13:1くらいになる。でもそれは燃料が有鉛だからできること。無鉛ガソリンではダメ、熱がかかりすぎて異常燃焼を引き起こす。エンジンを壊す原因だ。


 バルブガイドはオイルシールを外してしまう。ミニのバルブステムは思いのほか移動量が多いので適量のオイルを入れるべきだと思っているからだ。ステムとのクリアランスを1・5/100〜2/100mmくらいでリーマーを通してステムシールは使わない。摺動抵抗の低減は効果があると思っているし、この程度ならばオイルは出てこない。比較すればオイルの消費量は多くなるけれど白煙を吹くほどではなく、きちんと潤滑しているグッドな状態だ。最近多い良質なステムシールを装着する方向性とは矛先を異にする。ガイドの摩耗を防ぐには潤滑が必須、という考え方なんだね。これもありでしょう。


 しかも、ピストンのクリアランスは広い。既定値の最大8/100mm、もしかしたら10分代で0・1mmくらいはあるかも知れない。経験値に基づくデータといわせていただくが、問題が発生した実例はない。フリクションロスを徹底的に排除するのも、旧いマシンには適合している考え方だと思っているので、クリアランスは緩く、圧縮は下げる、オイルシールは要らない……のである。

 林はいう。半世紀前の英国が気温40℃になっただろうか。今の日本、とくに今年は強烈に暑く、ミニたちはたいへんな思いをしていた。たぶん、50年前の英国は最高気温40℃になったことはないと思う。そういう国で生まれているクルマで、しかも半世紀も遡る当時の設計陣が思いも寄らなかったことになっている。やはり、今の気候とか環境に合わせてアジャストしなきゃならないところは変えていくべきだ、と。オリジナル主義を否定はしないけれど、一年を通じて乗って楽しむのであれば、今の時代に適合させることも大切だということ。ただし、何が何でも最新テクノロジーの至上主義でもない。
 「ミニを組むのに最新技術は要らないんじゃないかなぁ、じっくりと見て考えればいいんだよ」と、まさに時間が止まっているかのようなことをつぶやく。これこそが林流のミニとの対峙の仕方なのである。

レストレーションにもさまざまな懸念が…

前回、ミニのモノコック・ボディは年々ダメになっていると書いた。多方に衝撃を与えてしまったのかも知れないが、鈑金作業を自ら行い、錆びたボディパネルに向き合う林だからこそ発した言葉なのであろう。つまり、これまでに何台ものボディレストレーションを行なってきたけれども、旧い時代のミニであれば、サビを削り、鉄板を補修して原型を復元することに、技術的な要素も含めて思い悩むことはなかったという。が、このところ、ミニの最終モデルと呼ばれる年式、いわゆる’97モデルをレストレーションしたがるオーナーが増えてきていると話すと、実際にどのような状態になっているのか、鈑金で補修することは可能なのか、などなど……、少しばかり悩みのタネを蒔いてしまったようだ。

クーパーSだからこそ伝わることがある

けっして林はクーパーS至上主義者ではないけれども、たっぷりとマージンを持ち、バジェットの制限すらなかったのではないかと思えるパワーユニットのありようには、共感し学ぶところは多いという。自身のミニのエンジンオーバーホールのために、その間の代替えとなるスペアエンジンを組み立てていた。ボウルタイプのオイルフィルタは、ここを外して紙フィルタを確認することでオイルコンディションのチェックができる。ミニ乗りはみんなボウルタイプにすべき、が持論だ

それぞれの部品にできることを細やかに

機械加工や製品の材質などには一家言を持つ林。それぞれの時代の製品がどういった特徴を持っているのか、莫大なデータが脳味噌の中に格納されているようである。’80年代になると機械設計にコンピュータを用いるのがあたりまえになる。おそらくミニもその時点で、プロダクツとして適正なのかどうか、メーカーは考慮しただろうと話す。しかし、設計変更をすると、型を全部作り直さなければならないから、そのコストを考えたんじゃないだろうか。材質を安価なものに変更することによって合理化を図ったんだという。そういった推察をもとに、ミニのパーツに向き合えば、より良い状態にケアを施して使っていくことができる。写真は部品のバランス調整の図だ。できることを細やかに行なうことこそが王道である

[取材]HAYASHI Garage 047-336-3796


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