機能も整備も進化した…
2017年秋、新型ボールジョイントをリリースする第一報がミニデルタから届いた。旧来の部品とは一線を画する最新方式の製品と知り、早速実車に装着してレポートを開始した。二年を経過し走行4万kmに達した時点で、検証を兼ねてのレポートを行う。
「新時代のボールジョイント」
『メンテナンスフリー・ボールジョイント』は現代の自動車に採用されるボールジョイントと同等のクォリティを得ることを目標に製作されたアイテム。もちろん、装着の座標も純正部品とまったく同じにしている。サスペンションのジオメトリーを変えることなく装着できることは、リプレイスパーツとしては必須の要件といえるだろう。
最大の特徴は摺動部に樹脂を用いているので基本的には潤滑不要のオイレス構造、部材の耐久性は10年程度は耐えるといわれているものだ。ガタつきが発生して許容限界を超えたら部品交換をすることになる。、旧来の部品の場合、メインテナンススケジュールが概ね2万キロメートルで点検調整、4〜5万キロメートル走行での交換を推奨されていることを思うと、1年1万キロメートル走行を想定するならば納得のポテンシャルである。
さて、今回のレポートは装着したボールジョイントの経時変化を確認するものだ。走行距離と摩耗状況の関係を推し量ることも目的のひとつである。冒頭にも記したように二年以上の時間を経過し、走行は4万キロメートルに達した。ジャッキアップをしてハブのガタつきを確認すると、上下方向でわずかにガタつきが発生していた。旧来であれば、グリスアップで様子見、といった程度である。続いて、ボールジョイントを外して内部の状況を確認してみる。右タイヤの上側と左タイヤの下側のジョイントに小さな錆が発生していて、それが原因で摩耗が始まっている様子であった。
当初はグリスアップ不要とメーカー指導があったのだが、ミニのジョイントは水分の侵入が完全に密封できないために現在は少量でもグリスを注入する方向でアナウンスしているという。従来のようにグリスを置き換えるほど注す必要はなく、水分がボール部に侵入しないように油膜を維持する程度で良いとのことだ。その作業を怠ったために編集子のジョイントには少量の錆が発生していたのであろう。
現実的には走行に支障のない程度の摩耗だったし、少量のグリスを定期的に注入すれば耐久性は充分に発揮できるといえよう。それ以上にシムによるエンドフロート調整が不要なこと、そして装着時にドライブシャフトを抜くこと無く作業できるのは大きなメリットといえる。ドライブフィーリングの向上と併せて、新時代と称するにふさわしい部品である。
基本設計が旧く、旧来からの方式を踏襲した部品を使用するミニの場合、ボールジョイントは定期的なグリスアップとエンドフロート調整のメインテナンスを必要とする構造で、ウィークポイントとも称されていた部位だ(下段)。エンドフロートはボール軸が適正なクリアランスで稼動するようにシムを挟み込むことで調整する。実際、この作業には手間がかかる。上段の新部品はギュッと取り付けてダストカバーを装着するだけ。作業は大幅に簡素化されている。
内部の構成部品を見ると、ボール形状の違いや樹脂部品の採用など、旧来の純正ボールジョイントとはまったく異なる保持をしていることが分かる。発売から2年半近くを経て、多くの賛同を得ているという。今回の検証により、樹脂部品の充分な耐久性が確認できたことと、ミニの場合はジョイント全体を密封することが困難なので、少量のグリスで水の侵入を防ぐことが耐久性を上げるポイントであることが分かった。この機に新たな部品と交換を果たし、第二弾の検証をスタートしたことを報告しておく。
[協力]ミニデルタ
http://www.mini-delta.co.jp