去る2月24日、ストミニ編集部は長老とともに、オーモリくんがいる静岡県静岡市へと向かった。18年ぶりに再会した長老の相棒は、その姿を新たにしながらも、当時の面影をいたるところに残していたのだった。
長老
本誌でおなじみのカメラマン、長老・リチャード・岩村。MF誌時代はモーリス仕様のオースチン・ミニ850「オーモリくん」を所有していた。
オーモリくん
モーリス仕様にドレスアップされていた’64年式オースチン・ミニ850。現在は新たなオーナーのもとで、レストアとドレスアップを受けている。
オーナー:長谷川孝夫さん
今回、レストアを手がけている、オーモリくんの新たなオーナー。長谷川さんはこれまで、20台ほどのミニを乗り継いでおり、妙高山で行われていたラリーイベントにも参加していたという。
この日、実に18年という長い時を経て再会を果たした長老とオーモリくん。現在は新たなオーナーのもとでレストアを受けながらその姿を変えているが、いたるところに残る当時の面影を見ながら、長老はときおり涙ぐみながら、当時の思い出を語った。
オーモリくんと長老の出会いのいきさつ
長老がオーモリくんを手にしたのは、ミニ・フリーク誌の編集部に入って間もないころ。当時は編集部に複数台のミニが置かれており、それらを好きに乗っていいといわれていたという。しかし、多くのミニ乗りを取材しているうちに、自身でもミニを所有しようと思うようになったのだとか。
「当時はジムカーナも流行っていたり、ご自身で愛車をいじられているかたも少なくありませんでした。当時は編集部のミニを借りていましたが、それではミニを楽しんでいる方の気持ちに近づくことはできない、と思ったことで、自分のミニを手に入れようと考えました」。
ちょうどそのころ、取材で四国に訪れた際に、ガレージ・アンドーにオーモリくんとスタンダード・クーパーが販売車両として展示されていたのだという。
「もともとバイクに乗っていたこともあり、最初はかっとび系のクーパーの方が気になっていました。しかし、誌面を作っていく上では、やはりミニの原点を知るべきだと思い、オーモリくんを試乗させてもらったんです。ノンシンクロなので、1速が入りにくかったり、アクセルを踏み込んでも全然スピードが出なくて、とても難しいクルマだな、というのが第一印象でした」。
再会したオーモリくんの姿を眺めながら、かつての相棒との思い出を語る長老。迎え入れてから長らくともに過ごしたオーモリくんだったが、ミニ・フリークの編集から退いたことや、息子さんの進学を機に手放してからも、心の中にはいつもオーモリくんの姿があったという。
そしてヒストリーは新たなストーリーへ
今回の取材がおこなわれた2月24日。実に18年ぶりの再会を果たしたオーモリくんの姿は、前述のようにボディワークやドレスアップがなされ、内装も長谷川さんの好みに合わせて手が加わっていた。しかし、随所に残るオーモリくんの面影を感じたことで、当時の思い出が次々と蘇った長老は、ミニがもつ「ヒストリー」は、オーナーひとりひとりとの「ストーリー」に変わると語る。
ガレージにはボーリングマシンなど、金属加工に必要な機材が備えられている。
「ミニは、そのときどきのオーナーの色に染まることで姿が変わるけれど、それでも、会えばかつて自分が乗っていたクルマだということが、不思議とわかります。これまで、私の中では、手放した後もオーモリくんとのストーリーが続いてきましたが、それも今日までです。今回、オーモリくんと再会したことに加え、新しいオーナーである長谷川さんと出会ったことで、今日からは長谷川さんとオーモリくんの新しいストーリーが始まりました。今日はお会いできたことを、とても嬉しく思います」。
長谷川さんのガレージには、オーモリくんのほかにも多数の自動車やバイク、
自転車が収められており、これらの整備に必要な工具類も揃えられている。
これまでに紡がれてきたヒストリーは、また新たなストーリーへと繋がったのだ。
2019.6月号より