乗用車の平均使用年数は10年を超えているが、それだけ長くなると所有する車のパーツがいつまで生産されているのか気になるところだ。特に消耗品や劣化する樹脂パーツ、ゴム類などはいつまでも作ってほしいものだ。
そこで今回はメーカーがパーツを生産する期間や、ファンの多い旧型車のパーツに対する取り組みをご紹介しよう!
文/藤田竜太、写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA、ベストカー編集部
■乗り続けたくても部品がない!?
丈夫で長持ち、壊れにくいというのが、国産車の大きな長所のひとつだが、長く快適に乗り続けるには、補修部品の安定供給が欠かせない。そうした愛車の維持管理に不可欠な、メーカー純正の補修部品が何年間製造され、いつまで入手できるかご存じだろうか。
意外なことに、クルマの補修部品に関しては法的あるいは業界団体の取り決めなどで、最低部品保管期間が決まっているわけではなく、いつまで補修部品を供給するかは、各メーカーの判断に委ねられている。
※家庭用電化製品は、経済産業省からの指導もあって、製品の機能を維持するために必要な部品の保有期間を公表している。(例:冷蔵庫やエアコンは9年、洗濯機が6年)
では、各自動車メーカーはいつまで補修部品を出してくれるのか。トヨタと日産の二社について調べてみた。
■車体の生産終了から10年前後が各メーカーの目安か
まずはトヨタ。
『出来るかぎり長く部品を供給できるように努めておりますが、何年間供給というのは一律に決まっていません。あくまで目安になりますが、工場装着の部品であればクルマの生産終了から約10年間となります。
ただし、部品によってはそれより短いものもあります。また、販売店装着オプションの部品につきましては、クルマの生産終了後は部品の製造を打ち切りますのでトヨタの販売店での在庫のみとなります』(トヨタのHPより)
続いて日産にも訊いてみた。
「純正パーツの補修部品は車両の生産終了になってから一定期間を経て、出庫がないものから順次製造廃止になります。またディーラーオプションの場合、車体が生産終了になってから3年が目安になります」と答えてくれた。
他のメーカーも基本的な事情は同じで、主要補修部品の供給期間は、およそ10年プラスアルファ。ディーラーオプションは在庫限りで、限定車専用パーツも早い段階で入手困難になりやすいといわれている。
軽自動車を除く乗用車の平均使用年数が13.51年(令和2年3月末現在)となり、年々そのスパンが伸びてきているのに、補修部品が車体の生産終了後10年程度しか供給されないというのはけっこう不安。
まして、中古車価格が高騰気味の1990年代のスポーツカーなどは、これから維持していけるのかと心配になってくる……。
とはいえ、メーカーサイドも名車と評され、今でも高い人気を誇る旧車のパーツに関しては、積極的に供給・再生産する方向で動き出している。そうした各車の取り組みもここでおさらいしておこう。
■パーツの再生産やレストアも! 各メーカーの取り組み
●日産『NISMOヘリテージ』
「NISMOヘリテージ」は、日産自動車、NISMO、NISMO Carsディビジョン(株式会社オーテックジャパン)とサプライヤーとが共同で製造廃止となった純正補修部品の復刻生産を検討し、第二世代のスカイラインGT-R、R32、R33、R34の三台を少しでも長く乗り続けられるようサポートする活動として知られている。
この取り組みは2017年12月からスタートしていて、すでにかなりの数の復刻生産アイテムが登場。年々そのパーツが充実してきている。
また復刻生産が困難な純正補修部品については、リプレイス品・修理での対応を実施。
●マツダ『CLASSIC MAZDA』
マツダは国産メーカーのなかでも、旧車の補修パーツを手厚く供給してくれるメーカーとして知られている。例えば、RX-7(3代目FD3S)などは、いまでも日常維持に必要なパーツの5~7割は供給可能。
さらに「CLASSIC MAZDA」という名称で、2代目FC3SやFD3Sの復刻パーツの供給を開始しはじめた。
また初代NAロードスターに関しては、復刻パーツの供給だけでなく、メーカー直々のレストアサービスも2017年12月から開始。「NAロードスターパーツ情報サービス」も提供も行なっている。
●トヨタ『GR Heritage Parts』
トヨタでは、現行スープラ=GRスープラの登場に合わせて、2019年からA70スープラとA80スープラの部品復刻活動を開始。GR Heritage Parts Projectをスタートさせた。
このプロジェクトでは、A70スープラとA80スープラの廃版になってしまった部品の復刻だけでなく、1960年代の名車、トヨタ2000GTとランドクルーザー「40系」の部品復刻にも取り組んでいる。
ランクルについては、40系だけでなく、他の歴代ランドクルーザーのヘリテージパーツについても今後取り組みを広げていく予定だ。
●ホンダ NSXリフレッシュプラン/ビート補修部品再販
他社に先駆け、メーカー自ら、NSXの本格的なリフレッシュ(レストア)サービスを開始したホンダ。基本メニューから、パワートレイン、足まわり、外観、内装などの各リフレッシュプランがあり、現在12ヶ月待ちになるほど人気だ。ビートについても100点以上の補修部品再販を行なっている。
一方で、ホンダは部品の製造廃止のタイミングが早いことでも知られている。インテグラタイプR(DC2)やシビックタイプR(EK9)、S2000のパーツは、すでに製造廃止になっているものが多い(例:DC2のブレーキローター! エンジンのオーバーサイズピストンは全車廃止)。
ホンダのスポーツモデルの維持はけっこう大変だ……。
■取り組みのさらなる拡大に期待
ちなみに各車とも純正部品からヘリテージパーツに扱いが変わると、部品価格が一気に高くなってしまう! またヘリテージパーツになったからといって、この先、供給の心配がなくなるかというとそうでもなく、予告無しに価格改定(値上げ)、生産廃止、販売中止となる可能性は十分ある。
さらに、純正部品は毎年、春と秋に価格改定や製造廃止の発表があるので、旧車ユーザーはドキドキなのだが、それでもメーカーによるヘリテージパーツへの取り組みがあるのはありがたく、こうした活動が今後ますます広がっていくことを期待したい。
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