最後のFRとしてブームになるほどの人気を集めたAE86型のカローラレビン/スプリンタートレノ。
そのAE86の後継車となるFFレイアウトに変更されたAE92型以降のレビン/トレノは、FRのAE86ほどの多数のファンは集めなかったものの、走りの性能では圧倒的に勝るFFのライトウェイトスポーツとして3世代に渡って進化していった。
FF車となったレビン/トレノのAE92型ではパワフルなスーパーチャージャーエンジンがラインナップされ、AE101型では5バルブエンジンを搭載。そして、AE111型ではさらなる走りのパフォーマンスアップが図られ登場した。
そんな5代目から7代目までのFF化後のレビン/トレノとは。そしてそのなかでも最強モデルはどれだったのか?
文/片岡英明 写真/TOYOTA、ベストカー編集部
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■レビン/トレノはFRのライトウェイトスポーツから始まった!
1クラス下の軽量コンパクトなボディに、パワフルなパワーユニットを搭載し、飛びぬけて速いクルマに仕立てたのがライトウェイトスポーツだ。その代表が、カローラレビンと兄弟車のスプリンタートレノである。
この駿馬が誕生したのは1972年3月だ。2代目の20系カローラとスプリンターの2ドアクーペをベースに、切れ味鋭い1588ccの2T-G型直列4気筒DOHCエンジンを積み、サスペンションをハードに締め上げた。リベット留めのFRP製オーバーフェンダーも走り屋たちの憧れとなっている。
1974年春、ベース車がモデルチェンジしたのを機に、カローラレビンとスプリンタートレノも第2世代に移行していった。レビンは2ドアハードトップ、トレノはクーペフォルムと、大きな差別化を図っている。
そして1979年春に3代目にバトンタッチした。ボディタイプはハッチゲート付きの3ドアクーペだ。2代目まではソレックス・キャブを2連装していた。が、排ガス規制を乗り切るために3代目のレビンとトレノは電子制御燃料噴射装置のEFIを装着する。
そして排ガス対策が一段落した1980年代になると、トヨタは積極的にパワーユニットを新世代に切り換えた。レビンとトレノが積んでいたDOHC 2バルブの2T-G型エンジンも3世代で使命を終えている。
新世代の1.6Lツインカムを搭載した記念すべき最初の搭載車は、1983年5月に登場したAE86型レビンとトレノだ。ファミリー系モデルは駆動方式をFFに転換したが、走りの愉しさを第一に考えるレビンとトレノは後輪駆動のFRを守り通した。
ボディタイプは、3ドアのハッチバッククーペと2ドアのノッチバッククーペが用意されている。トレノはポップアップ式のリトラクタブル・ヘッドライトだ。
心臓は、レーザーαツインカム16バルブと呼ばれた4A-GEU型直列4気筒DOHC4バルブで、総排気量は1587ccである。燃料供給は最新の電子制御燃料噴射装置EFI-Dを採用した。吸気側にT-VISを配した4A-GEU型エンジンは、クラス最強スペックだ。7000回転まで気持ちよく回り、レスポンスも鋭い。
トランスミッションはクロスした5速MTと電子制御4速ATが用意された。
サスペンションは、フロントが改良型のストラット、リアはラテラルロッド付き4リンクのリジッドアクスルだ。連載漫画の主人公がトレノに乗り、峠道で痛快な走りを見せたことから、その実力は過大に評価された面もある。だが、FRならではの振り回すドライビングは理屈抜きに楽しかった。
ドライビングテクニックを磨くには最適なスポーツモデルだったが、限界域での挙動に不安定なところがある。何度かスリリングな場面に遭遇したが、チューニングパーツが豊富に用意されていたから自分好みのライトウェイトスポーツに仕立てることができた。
また、レストアしたAE86は、最新の技術を用いてチューニングしているから、不安なく攻めの走りを楽しむことが可能だ。
■AE92型5代目レビン/トレノ初のFF化モデル
1987年5月に登場した次の世代のAE92から、レビンとトレノはFFのスポーツクーペに生まれ変わった。ボディタイプは2ドアクーペだけとなり、プアマンズ・ソアラのようなポジションに落ち着いている。
エンジンは横置きにマウントされ、前輪を駆動した。改良された4A-GEU型直列4気筒DOHC4バルブに加え、スーパーチャージャーで武装した4A-G ZE型DOHC4バルブが登場したことが新しい。1989年夏にエンジンにメスを入れ、パワーアップしたが、スーパーチャージャー仕様を含め、高回転まで気持ちよく回るように改善されている。
サスペンションは、4輪ともストラット/コイルの4輪独立懸架だ。シャシーが新しくなったこともあり、素直でコントロールしやすいハンドリングを手に入れている。全体にマイルドな性格になったから、荒々しいAE86を懐かしむファンも多かった。だが、素性のよさに加え、速さもピカイチだ。
実力が高いことはグループAレースなどでチャンピオンに輝いたことからもわかる。
■AE101型6代目レビン/トレノ 4A-Gエンジンが5バルブへと進化
バブル期に開発され、1991年6月にデビューしたのが、FF2代目のAE101系カローラレビンとスプリンタートレノだ。最大の魅力は1.6Lの4A-GE型直列4気筒DOHCエンジンが第2世代のスポーツツインカムに生まれ変わったことである。
可変バルブタイミング機構のVVTや1気筒当たり5バルブ方式を採用し、レーシングエンジン並みの鋭いレスポンスと痛快な加速性能を手にいれた。また、DOHC4バルブにインタークーラー付きスーパーチャージャーを組み合わせたエンジンもパワーアップし、全域でパンチとパワー感を増している。
ハンドリングも痛快だ。革新的なスーパーストラットサスペンションや進化版の電子制御サスペンションのTEMS、ビスカスLSDを採用し、荒れた路面でも強大なトラクション性能を見せつけた。だが、先代より車両重量は80kgも重くなっていたから、軽快感は今一歩にとどまっている。
■AE111型7代目レビン/トレノ シリーズ最強の最終型
FFのレビン/トレノの集大成モデルが、最後の作品となったAE111だ。1995年5月にデビューしたが、ピュアスポーツとしての性格を強めた。その証拠にスーパーチャージャー仕様を整理し、4A-GE型直列4気筒DOHC5バルブエンジンだけに絞り込んでいる。しかも最高出力を160psから165psに引き上げ、VVTも引き継いだからパンチがあり、扱いやすさも群を抜く。
また、骨格構造を見直し、AE101レビン/トレノより70kgもの軽量化に成功した。衝撃吸収ボディの採用により剛性と安全性も大きく向上している。特に1997年4月以降はGOAボディになり、さらにしっかり感を増した。
スーパーストラットを採用した5速MT車はヘリカルLSDも標準だからスタビリティ能力は高いし、限界性能も高い。
インテリアなどにカネがかかっており、いい気分で乗れるのはAE101系レビンとトレノだが、操って面白い最強のレビン/トレノは最後に登場したAE111だと思う。FFスポーツだが、FRのAE86のように振り回す楽しさも満喫できる。
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