モーリスの当時の正規ディーラーである日英自動車で販売された車両は日英物と呼ばれるが、埼玉県のKさんはモーリスとMGの日英物を所有する熱烈な日英自動車ファンだ。
ディーラー車。キャピタル物。日英物。
欧州のクラシックカーに乗る人にとって、この響きは格別だ。なにせクーパーやクーパーS Mk-II~IIIあたりで考えれば、50年くらい前に輸入された当時は高額で希少な輸入車が、今でも動く状態で残っている自体すごいことであるし、そんな車両を探し出すなんて相当に難しいことだからだ。
ミニの場合は「オースチン系のキャピタル物」か「モーリス系の日英物」と呼ばれている車両が正規ディーラー車になるのだが、Kさんの’68モーリスミニクーパーS Mk-IIは、モーリスであり日英物。
「私のクーパーS Mk︲Ⅱ は、14年前に手に入れたもので、日英物の75号車です。日英物のディーラー車である証は、車体にも車検証にもあって、車体ではエンジンルーム内の運転席側に車台番号が刻まれていますが、この12MCー0075NのNの部分が日英物に打たれる刻印です。キャピタル物でしたら、Nに代わってCが刻印されることになります。
また車検証上でも、日英物なら車台番号の最後にN、キャピタル物ならCが入っています。後年、並行輸入された車両では、NとかCはもちろん付かず、また型式の項目が12MCではなく、不明と記載されていたりします」
Kさんは、20歳のころからしばらくの間、ミニ1000に乗っていた経験があり、いつか再び乗りたいと思いながら14年前にまたミニに乗れる環境になり「乗るんだったら日英物」ということで、モーリスミニクーパーS Mk-IIをお店に探してもらった。
購入した時点で、すでに38年物となっていたのだから、もちろんフルオリジナルというわけにはいかないが、車体の雰囲気が良かった。
このクーパーS Mk-IIでは、過去には競技に使われていたこともあったようで、フロントホイールアーチ開口部が広げられていて少しワイドフェンダー風になっている。この部分、Kさん的にはどうにかならないものか、と気になっているが、ビンテージミニ乗りの先輩方からは、それはそれで昔の雰囲気を残しているから、と言われているそうだ。
またこの時代はリアビューミラーを運転席側ピラーに付ければ車検OKな時代だったので、フェンダーミラーは付けていない。そしてグリル前に付けている純正オプションらしきウィンドマフ(冬季のオーバークール防止のため)がすごくいい雰囲気を醸し出していた。
クーパーS Mk-IIで日英物というプレミアムを十二分に楽しむKさん、数年前にはMGミジェットMk︲Iの日英物ディーラー車を英国車の先輩から譲ってもらい、2台の日英物を愉しんでいる。
日英物のディテール
Kさんがバンパーに付けている日英自動車ステッカーはレプリカ品で、本物はパネルの中に入れてある。日英物である印は、エンジンルーム内の車台番号と車検証の車台番号の最後にNと入ること。また車両のディテールでは、ナンバープレート回りに特徴があり、フロントならナンバーベースの形が横に長いこと、リアではナンバー灯の位置を高くするゲタとして、金属を折り曲げたベースが使われる。