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【トランスジェネレイション特別版】一途に半世紀、なお遊ぶ|’67 AUSTIN MINI COOPER 1275S MkI

過去から引き継がれてきた趣味の環境を新たな世代の価値観で再発信するトランスジェネレイションの特別版。50年の長きにわたり、愛すべきミニを一心不乱に遊ぶこと……そんな想いを至上と過ごしてきた御仁とひと時を共にしてみる。お金で買うことも、遡ることも、もちろん先に飛ぶことも叶わない、大切な時間の積み重なる物語を紐解いてみる。

ロングマンズ・モーターハウス「永井正男」

語るに長い。まさにロングマンである。

 永井正男がミニを強烈に意識したのは23歳の時だという。19歳で郵便局に奉職して『エスロク』、『ベレジー』、『エヌサン』と絵に描いたようなクルマ三昧を過ごしてきた。23歳の時に近所の寿司屋のオジサンに「お前、クルマ好きだろう。乗ってみろ」といわれ、ミニをその場で貸してくれた。永井は面白くて町内を3周した。一撃でやられてしまったようである。時は昭和45年、西暦でいえば1970年。MkIIかMkIIIだったと話すので、輸入したての新車だったに違いない。まぁ、豪気な趣味人がいたものだ。そんな想いをしつつも永井は薄給の身。直ぐに手に入れることは叶わず二年を費やしてアーモンドグリーンのクーパーS、MkIIを所有した。人生初のミニだった。

 その後永井は数台のミニ遍歴を重ねながら、どっぷりとミニ漬けのライフにのめり込んでいく。’74年にMkIIIを手に入れると、1976年に開催された第一回のTACSに参加、初めてサーキットを走行することになる。
 当時、故郷の栃木に戻って家庭を持っていた永井は、家族を連れて筑波サーキットに赴き、多くのミニの仲間を得た。おそらく、ミニと過ごす愉しさは、当初からバッチリと刷り込まれたに違いない。オーナーズクラブ、クラシック・アクティブを立ち上げ、1978年に催された第一回アニュアルミーティング・クラブ305にはスタッフとして参加している。’82年にはSCCJの群馬支部を設立すると、クラブ主催のイベントで筑波サーキットやエビス・サーキットでの競技を楽しんできた。もちろん、自身のオーナーズクラブ活動も活発に行って、同時期にクラブ主催のフレンドリーカップ・ジムカーナをスタートさせている。

 詳細な説明は割愛させていただくが、遡ること40数年、’70年代から’80年代初頭は、’80年代中盤に巻き起こるミニのブームを目前に、まさにニッポンのミニ草創期とも呼べる時期だ。前述のTACSにせよ、SCCJにせよ、往時は自動車を趣味として愉しむ最右翼の存在。ミニ・イベントの草分け、クラブ305は現在の日本中のあらゆるミニのオーナーズクラブやイベントの根幹となるような存在だ。永井は、そのウェーブのなかで多くの仲間を牽引していたのである。

 とはいえ平成17年に勇退するまで、往時の永井は郵便局員である。旺盛な’80年代、’90年代を過ごしながら、自宅ガレージや近所の自動車工場をクラブで借り受け活動拠点とした。仲間とともに修理はもとより、レーシングカーの製作に興じたと話す。メンバーの遊び場、クラブハウスのようなものなのだろう。集う面子にはプロのメカニックも、鈑金塗装の職人もいたようだ。スーパー・アマチュアリズム、そのものである。思うに、こういった集合体はけっして珍しいものではなく、当時は我が国のそこかしこに存在して、今に続くミニ潮流の源流となっていたことだろう。

 さて30数年間勤め上げた郵便局を早期退職した永井はその年に、現在店舗を構えるこの地にガレージを建てはじめた。2005年のことである。慌てる必要もなかったのかも知れない。およそ2年半という時間をじっくりと費やしてスペシャルショップとしての活動を開始した。以来12年間。「ミニ・クーパー大好き人間が自然と集まる、アットホームな手作りのショップ」を標榜して活動してきた。

 飾らない、まるで秘密基地のようなショップに足を踏み入れると、ミニのファンであれば心が躍ることは間違いないだろう。実にショウルームの中二階はクラブハウスとして機能して、週末ともなれば関東各県から永井を慕う仲間達が集まり、夜を徹して目一杯遊んでいく……。そんなことが容易に想像できる構えは、一途にミニを楽しみ、仲間を大切にしてきた永井正男の想いそのものだ。取材に訪れた編集子も、何を隠そう前日の夜から呼び出されて、ファンな時を過ごしてきた。初対面にもかかわらずだ。もちろん再開の約束をしてきたのはいうまでもない。



 ロングマンズ・モーターハウスに置かれたものは、そのまま半世紀を超える永井のミニ・ヒストリーといえよう。ひとつひとつにユニークなストーリーがあり、それらはまだまだ未来に向かっているのである。けっしてキレイに展示されたものではないけれども、饒舌に語ってくれるのである。

 残念ながら、ロングマンの歴史をひとつひとつ細かに説明するにはスペースも、編集子のパワーも決定的に不足である。今回のレポートで選抜して掲載したアーモンドグリーンのクーパーS、マグワイヤのシルエットマシンもモッグの8ポート、ミニ・マイナスのボディはもちろん、なにもかも……、気持ちを惹き付けて止まない。それは、永井本人はもちろん、ショップに集う誰しもが洗礼を受けていることだろう。

 語るに長い、ロングマン・モーターハウスの野望。クセになる。また聞きに行きたくなってしまった……。

動画での取材の様子はこちらからチェック!


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