いつまでも応急処置のままというのは芳しくない。長らくオートマチックトランスミッションのオイルクーリング実証実験と称してスペシャルパーツを装着してきたが、同様のトラブルを複数回経験したので、軌道修正が必要と判断した。基本的には“オートマチックトランスミッションに効果的なオイルクーリング装置を作り上げる”という目標に変わりはないけれども、その方法論は根本から見直すことにした。
油圧ホースを重機並みに頑丈なモノにする、といった方法や金属パイプとOリングで配管するとか、解決案を並べてはみたものの、いずれもステップアップしたベターな解決方法とは思えず、最終的には油圧のかかるラインからオイルクーラー経路を分岐させるのはやめることにした。ちなみに、オートマチックトランスミッションの油圧は1300ccエンジンだと通常は7kg/㎠程度、リバースは11.5kg/㎠くらい。冷間始動時のリバースセレクトだとなんと18〜20kg/㎠近くまでゲージの針が振ることがある。厳しい環境なのは当初から分かっていた……、でも試したかったのだ。そのくらい、ミニのオートマチックトランスミッションのエンジンオイルは油温が上昇するのだから。
新たなオイルクーラーシステムはギアボックスのいずれかの場所から電動ポンプでオイルを吸い出し、クーラーユニットで冷やしたオイルを再びギアボックスに戻す作戦。あるいは、オイルポンプの吸い上げラインを引き回してオイルクーラーを装備するのも良いかも知れない。これなら電動ポンプがなくても機能できる。いずれにしても、新たなシステムが開発できるまではノーマルに戻すことにした。
そんな経緯をキャメルオートの曽根氏に話していたら、まんまと『漏れないフィルターボウル』を装着する羽目になってしまった。まぁ、5連PECSを使っていたのだから、むしろ当然の帰結ということか……。で、早速フィルタヘッドを交換。旧来の開発製品は協力してくれたブロスガレージにご返却である。長々とありがとう。
現在はオイルクーラーなしでの走行。油温を計測しているから、高速道路ではドキドキである。オイルクーラーの効能は少なからずあった、ということだ。とりあえず、120℃を上限に油温が超えないようにトロトロ走ってる。反面、オイルホースを取り外したことで、油圧による変速制御の雰囲気が変わった。剛性感があるというか、歯切れが良いのである。やはり、オイルクーラー経路を油圧のラインから取り出すことで、なにがしかの圧力損失があったのは間違いないだろう。となると、圧損によってエンジンの潤滑不良が発生していないかが残る不安要素ではある。オーバーホールしてみないと結果は分からないが、電動ポンプ循環に作戦変更した理由のひとつでもある。
ミニというクルマは、数値でモニターできる各種メータを装着すると、かなりの割合でドキドキすることが増える。知らぬが仏、とはよくいったものである。ただ、これだけ時間の経ったミニを大事に乗り続けるのならば、コンディションのモニタは必要なことではないかと思う、今日この頃である。
ねじのストロークが長い……フィルタボウルは30㎜のレンチで回す
田代(G)基晴
10月号より本誌編集長:ミニより1歳年下の1960年生まれ。ミニ・フリーク誌のスタートからどっぷりミニ漬けの人生。現在はフリーランスの写真家、編集者として活動。趣味の伝道師を目指し、日々精進している…