サーキット走行におけるタイム短縮のポイントのひとつは、如何にコーナリングでのロスを減らすかということ。
その手段としてLSDは本当に効果的なのか?
LSDのメリット
コーナリングが安定!
コーナリングで生じる左右のタイヤの回転差を吸収することで、エンジンからの駆動を効率的にタイヤに伝達することができる。これにより、コーナーでアクセルを踏み込んでも、外に飛ばされることはなくなるのだ。
LSDのデメリット
ステアリングがさらに重くなる
ダイレクトに伝わる駆動力が操舵への抵抗となるため、ステアリングを曲げるだけでもかなりの力が必要になる。スプリントでは耐えられても、耐久では不向き。
ファイナルギアの変更が必要
多くのLSDはヘリカルカットのスタンダードタイプが使用できず、専用のストレートカットのファイナルギアを用意する必要がある。
LSDの効果は?
サーキット走行に臨むミニ乗りであれば、一度は聞いたことがある「LSD」。これは「リミテッド・スリップ・ディファレンシャル」で、コーナリングの際にフロントの内輪から荷重が抜けたとき、内輪側の駆動が止まることで、外輪だけでコーナーを曲がりきらなければならなくなる。これを防ぐのがLSDの役割であり、左右の回転差を吸収して両輪に駆動を伝達することで、コーナーでも確実に路面を捉えていられるのだ。
LSDのメリット
LSDのメリットについて、京都府京田辺市のテイコクパワーズ・伏見代表にお話をうかがった。伏見代表によれば、乗り方によって違いはあるものの、それぞれにメリットがあるという。
「まず、ミニでレースをされる方にいちばん多いのが『減速してからコーナーに入る』方ですが、この場合はすぐに立ち上がらなければならないため、コーナーでアクセルを踏み込んで加速しながら曲がれるという点では、その恩恵は大きく得られると思います。しかし、一方で稀にコーナー手前で減速せず、車体の荷重移動だけで曲がり切る方もいます。このような方は基本的にLSDに頼って走るようなことはありませんが、例えばコーナリングのミスでロスが生じても、次のコーナーで取り戻せるので、万が一の保険として装着されている方もいるようですね」。
LSDのデメリット
コーナーでの加速ができるという点においては、サーキットでは特にアドバンテージとして活きるように思えるが、その一方でデメリットは生じるのだろうか?
「やはりいちばんはステアリングが重くなるという点ですね。これは腕力が弱い方ではマシンをコントロールできず、むしろコーナーを曲がりきれない・曲がりにくくなったという状況につながる可能性があります。もっとも、これはトレーニングで鍛えたり、慣れるまでこなすことで解消できることでもありますが、それでも、効果があるのはスプリントレースが限界だと考えています。これが耐久レースの場合は、いくら慣れている方でもさすがに疲労がたまるので、コーナリングの精度は次第に落ちてきてしまいます。中には疲れてきた頃に半クラでコーナーを曲がる方もいますが、これはそもそも充分な駆動が伝わっていない状態なので、タイムを落とすことにつながります。そうした点では、むしろLSDに足を引っ張られることにもなりかねないので、耐久に向けたマシンにはオススメしていませんね」。
お話によれば、そもそもステアリングが重くなるのは、両輪に駆動が伝わることで、軌道に乗ったかのようにタイヤが向く方向へと進む力が働く。それを無理やり曲げようとすることで抵抗が生じるのだそうだ。
「また、これをデメリットといえるかはわかりませんが、スタンダードタイプのファイナルギアには装着できません。基本的にレース用のものは専用で用意されたストレートカットのファイナルギアとドロップギアを用意する必要があります」。
もともとレーシングマシンを作るつもりであればクリアできる問題だが、これまで乗っていたミニの仕様変更で装着するとなると、いささかハードルが高いように思える。
もちろん、これらデメリットと思える部分も、ドライバー自身の腕力や技術、マシンが目指す仕様など、その程度は前提条件で大きく変わってくることなので、デメリットだけで判断することではない。期待できる効果も大きいので、そこから得られるベネフィットと、それに対するコストを踏まえて、よく考えたいところだ。
2019.4月号より