遅ればせながら32FES参戦記その1です。暗い話ですので、楽しいレポートを期待している方にはゴメンナサイです。

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32FES前日の8/23金曜日は会社を休んで準備に充てました。

午前中に三郷まで電車で移動し、緑ミニに雨降り対策やら暑さ対策を施し、P師からセッティング状況を聞いた上で富士に向けて出発です。

セッティング状況はかなり厳しくて、SVでは32FESに向けて3台の整備+32FES展示用のOwensボディ作製を同時進行していたそうで、そのため緑ミニのエンジンに火が入ったのが水曜日の夜中、とりあえず街中と高速を走れるだけの最低限のセットアップが出来たのが木曜日の夜という追い詰められた状況でした。そのため富士までの道中でアクセル開度大の領域を僕自身がセットアップしながら行くことになりました。

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首都高の渋滞を約2時間かけて抜け、海老名SAで一休みしてからようやくセットアップ始めようかなという大井松田IC手前のあたりでエンジンが不調になりました。

症状はパタパタした吸気の異音とトルクダウンで、経験的にはバルブが開いてないかあるいは閉じてない時の症状です。

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先に富士入りしていた白い天使さんことT橋さんとS藤さんにローダーで迎えに来て頂いてとりあえず富士に向かいました。このタイミングでSVに戻ってもP師居ませんし対応も出来ないですからね。何よりまたあの渋滞を抜ける気力がどうしても無かったというのもありますが。

T橋さんとS藤さんはOwensボディの搬入のために待機してくれていたのですが、おかげで助かりました。てっきりもうビール飲んでるかと思ってましたので・・・救助ありがとうございました!

しかし、僕の32FESはここで終了です。昨年から数えて5回連続のリタイヤ、しかも今回はエンジンの仕様も完全に変えての再チャレンジで時間もお金もかけて準備してきたのですが、にもかかわらずレース前の慣らし運転段階でリタイヤです。かなり心折れました。
この後は0次会としてT橋さんの部屋で飲んだくれさせて頂きました。T橋さんS藤さん、ビールごちそうさまでした。そしておつきあい頂きましてありがとうございました。

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不調の原因はヘッドにオイルが回っていなかったことによるロッカーアームの焼き付きでした。アーム周辺が完全に乾いていて、アルミ製のアームが削れて出来た粉が大量に発生しています。

ここから先は32FES終了後にヘッドを開けてからの診断結果になります。

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ロッカーアームをひっくり返してポストの座面から見た図です。8番のロッカーアームのボールジョイントが激しく削れているのが見て取れます。

ロッカーアームポストの、棒で示している部分の穴にヘッドからオイルが供給され、ここから先で中空のシャフト内部を経由して各アームにオイルが供給される仕組みになってます。とりあえずここにはオイルは来ていませんでした。というわけでより上流に原因はあるわけですが、

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ヘッドを外してヘッドガスケットを見たところで原因判明です。ガスケット上にこびり付いている白い紐状のものはシール剤ですが、こいつがオイル経路を塞いでくれてました。

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ヘッドガスケットと対になるヘッド側を見た図です。

8ポートヘッドはヘッド内部のポートの取り回しが5ポートヘッドとは違うために、5ポートヘッドのような貫通穴によるオイル経路が形成できません。そのため、ヘッドとブロックの合わせ面にこのように横方向の溝を掘ってオイル経路を確保してます。その先はスタッドボルト穴を使ってヘッド上面のロッカーポストまでオイルを届けるという驚きの構造だったりします。

その溝にシール剤が流れ込んで固まった結果、オイルが流れなくなってしまったわけですね。

そもそも何故シール剤なんて使う必要があったんだっけ?というと理由はあって、8ポートヘッドを載せる際にはプッシュロッドとブロックが干渉しないようにブロック側のプッシュロッド穴を拡大してやる必要があります。そしてその穴の大きさに合わせてヘッドガスケットに開いている穴も拡大しなければならないのですが、そうするとせっかくヘッドガスケットに形成されている穴周辺のビードを削ることになるんですよね。

ヘッドガスケット面には冷却水の穴も開いてますので、例えばオーバーヒート寸前で内圧が大きくなった際にこのビードを削った部分からプッシュロッド穴に冷却水が抜けると嫌だなあとP師は心配してくれたのですよ、そして良かれと思って念のために・・・、

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プッシュロッド穴周辺にシール剤を塗布してくれたのでした。・・・作業途中の写真残っていたそうです。本人は完全に忘れていたそうですが汗

この写真だけ見ると冷却水漏れの心配に対して適切かつ完璧に対処しているように見えますが、この上に載るヘッドに掘られているオイル溝ってこの塗布したシール剤を完全にまたいでいるんですよね。まして相手は面研して平滑度の高くなったヘッド面ですから、それに押されれればシールは限りなく広がるか流れやすいところに流れていくはずで、つまりオイル溝をまたぐ部分以外のシール剤もかなりの部分が流動してオイル溝に流れ込んだのでしょう。オイル溝が詰まったのは当然の結果だったのかと。

ガスケットにシール剤を使うとオイル溝を塞ぐリスクがあることは赤ミニ時代に経験していて(こちら)、僕もP師も知っていたはずなんですよね。にもかかわらず目の前の心配点を優先してやってしまったということは、それだけ時間に追われていて、また睡眠不足で判断力が低下していたのではないかと想像してます。

シール剤を塗る前に一息ついていたならば以前そういうトラブルがあったことを思い出せたかもしれない。
あるいは一歩引いて周りを見てみれば対面にオイル溝があることに気づけたかもしれない。
撮影した写真を僕に送る余裕があればそれを見た僕が気づけたかもしれない。
エンジンに火が入ってから余裕があればヘッドにオイルが回っているか確認できたかもしれない。
・・・等々、最悪の状況に行ってしまう前に気づけるチャンスはあったはずなんですが、余裕の無さがそれらを全て吹っ飛ばしてしまったのかと。

2年に一度のお祭りですから参加して走りたい気持ちはもちろんありました。その一方で、Owensボディを展示するとか緑ミニ以外にもエンジンから作り直す車両があるという話も聞いてましたので、現実的に無理じゃないかなとも心配してまして、無理だったら断ってもいいよと伝えてはおりました。でもP師は僕の気持ちを察して受けてくれちゃったんですよね、それが完全に裏目に、しかも最悪の形で出てしまったなあと反省してます。

僕自身の仕事も同じなのですが、納期を守るのも大事、性能を確保するのも大事なんですが、それより優先しなければならないなのが耐久信頼性の確保です。止まって走れなくなるほど商品として最悪なことはないんですよね。

会社ならば仕事の量が多くて回らないならば人を確保してその仕事に充てれば良いだけなんですが、一人で運営しているSVの場合はP師自身が仕事を受けるか受けないか、どこまでやれるかを考える必要があり、そしてそれを考えられるだけの時間的余裕が無ければなりませんし、時には断る判断もしなけらばなりません。せっかく丁寧に作業してもワンミスで壊してしまったらそれにかけた時間そのものがもったいないですからね、余裕を持って確実に作業できるように仕事のスタイルを見直す機会ではないかとも思ったのでした。

あぁ・・・32FESレポートのはずがいきなり重い話になってしまいましたが、僕的には避けては通れない話だったので気合いを入れて書かせて頂きました。次は明るい話をお伝えできるはずです!←

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