タイヤをどう使えばよいのか!?


ここは埼玉県所沢市にあるミニ専門店「ガレージプラウド」。
店主の佐々木靖氏は元々トヨタ系のレーシングチーム、トムスでドライバー兼メカニックとして腕を磨き、その後もレーシングチームでメカニックを務めてきた。
ミニ専門店に引き抜かれてからは、またたく間にミニを速く走らせる秘訣を習得。998レースでは幾度もチャンピオンを獲得し、レース系ミニ専門店としてのイメージが強い。ところが仕事の大半は街乗りのノーマル仕様で、両方に強みを持っている。
今回は速く走るために大切な要素、
タイヤについて聞いてみた。


クルマにとってタイヤは非常に重要な要素です。
よく「タイヤが路面に接地しているのはハガキ1枚分」といわれるように、クルマは1輪当たりハガキの面積で大馬力を路面に受けてもらい、また急減速の縦Gや限界のコーナリング時の横Gを受け止めてもらっている。今回はタイヤについて話そう。

ミニの場合はタイヤの選択肢があまりないですね
10インチ、12インチのタイヤは生産はされていますが、そのサイズの現行モデルはないので、普通のタイヤカタログにも載っていない。だから静粛性を重視とかグリップを重視とか、耐摩耗性を重視とか、用途別の選択もしにくいと思う。

ただ、スポーツ走行やレースでサーキットを走るときには、タイヤの使い方にはいろいろノウハウがある。もっとも大切なのは空気圧です。適正な空気圧がいちばんグリップがよく速く走れるはずだから。サーキットで走り始めたら数周でタイヤは温まるので、ピットインしてここで温間のリアルな空気圧を測るのが大切。空気圧の目安はメーカーの推奨の圧を基準に考え、それぞれ4輪の空気圧を調整する。そして走行後、タイヤが冷えてから改めて冷間の空気圧を測る。こうすると冷間のときの空気圧が温間でどのくらい上がるかの目安になる。これはあくまで目安で、その日の路面温度で異なります。しかしデータの蓄積や経験を重ねることで、次第に狙いに近い空気圧が得られるようになり、そのデータは次回行ったときに生きる。

Sタイヤのいちばんグリップがよいのはやはり新品で、最初に熱を入れた後の数周です。その意味では予選でタイムを狙うなら新品タイヤを付けて走り出すことです。でも数周の間にタイムを出さねばならないので、他車に行く手を阻まれないような状況判断も必要です。

雨の日のタイヤセッティングはタイヤを温めるようにすること。したがってタイヤがヨレるように空気圧は低くします。よくある間違いは、雨は怖いからと何もかもムリしないで走ること。ブレーキングはリスクが大きいからあまりムリしないとしても、立ち上がりでは積極的にアクセルを踏んでいくことです。そうしないとタイヤ温度が上がらずグリップがよくないままです。ほかのクルマが温度を上げてグリップをよくしているのに、自分だけタイヤ温度が上がらず、ずっと恐々のドライビングになりかねない。こういうことってありうるんです。似た例で、富士スピードウェイの100Rをフォーミュラで走るのに、3速で恐々走るより、恐さをこらえて4速で速く走ると、エアロパーツでダウンフォースが高まり、グリップが増し安定して速く走れる例がありましたね。

雨の日のタイヤ空気圧の基本は下げることだけど、大雨で水はけが問題になるほどの時には、空気圧を上げることもあります。空気圧が低いとトレッドの溝が狭くなってしまいがちだから、むしろ高めて溝が広がる方向にするわけです。

いわゆるSタイヤは溝が少なくトレッド面が広い。そのため雨には弱そうに感じるかもしれないが、意外にグリップがよいことは知っていたほうがいい。大雨で水はけが問題になるような場合は別だが、そうでなければSタイヤで行くべき。Sタイヤのトレッドコンパウンドはウェット路面でもグリップがいいんですよ。

一般タイヤの話になりますが、グレードの高いタイヤはグリップもよいし快適に乗れますが、これも7年とか旧くなると性能は確実に落ちますね。たとえまだ山があっても、経年変化があるんでしょうね。グレードの低い新しいタイヤのほうがグリップがよく、高速走行でも安定して走れます。

新しいタイヤを組んだ場合には必ずタイヤバランスを取りますよね。しかし、よくあるのがバランス取ったばかりなのにハンドルにシミー(振動)が出るというのがあるんです。サスペンションなど車両に問題があるんではないかと思ってしまうんですね。それで「試しにスペーサーを取ってみて」と言うんです。するとピタッと直ってしまう。つまりスペーサーが悪さをしているんです。たいてい汎用のスペーサーなので、12インチ専用とかではなく、もっと大きなサイズにも対応しているので、スペーサーを入れたときにセンターが出ていないんですね。それでアンバランスが出て高速でシミーが出てしまう。普通のクルマではハブリングを使ってセンターを出したりするんですがね。

ガレージ・プラウド 04-2945-3232
http://www.mini-proud.com

2017.10月号より