国内外問わず1980年代の国産車が超がつくほど注目されているのはご存知の通り。ただオーナーが困るのは当時の味を堪能するためのタイヤ選び。ヨコハマタイヤが旧車専用タイヤをリリースしているものの、当時の走りは2023年になっても味わえるのか?? AE86で伝説の漫画「頭文字D」聖地のひとつフルーツラインで検証してみた!!!
文:島下泰久/写真:小林岳夫
■当時は憧れだったHF Type D!! 復活は素直に嬉しいぜ
いま私の手元にあるAE86型スプリンター トレノは、自分のハチロクとしては2台目。
最初は大学生の頃から7年ほどカローラ レビンに乗っていた。今のトレノは、手放して10年以上も経ってからやっぱり恋しくなって、2014年に手に入れて今に至る。
最初のハチロクの頃には、タイヤはYOKOHAMAばかり履いていた。何しろ当時は「イニシャルD」はまだ無かった頃。
そうではなくドリキンブームの中で手に入れたハチロクだったから、タイヤ選びもそれ一択だったのである。
但し、当時の自分の懐事情では、選べたのはGRAND PRIX M3/M5/M7Rといったモデルで、それはそれで順番に履いては楽しんでいたけれど、実際には「ADVAN」というブランドへの憧れは常に抱いていた。
特に、伝説的な存在だった「HF Type D」の存在は、すごく眩しかったのを覚えている。
だからこそ2017年、「ADVAN HF Type D」が復活すると聞いた時には一瞬、我が耳を疑い、そして驚喜した。
ミニサーキットで遊ぶために手に入れたハチロクだったけれど、その走りの楽しさ、充足感に、もっと色々な場面で乗りたいなと考えていた頃だったこともあり、まさにジャストタイミングで世に出てくれたのだ。
■今やエコタイヤだけ……旧車のタイヤ選びは超厳しい時代
ハチロクのようないわゆる旧車のタイヤ選びはとても難しい。最新のハイグリップタイヤではグリップ力が高過ぎて、クルマへの入力が大きくなり、場合によってはクルマを痛めかねない。
そもそも扁平率の低い当時のサイズでは、スポーツタイヤの選択肢はもはや少なく、選べるのはエコタイヤだけだったりすることもある。
仮にグリップ力は十分だったとしても、当然フィーリングにスポーツタイヤらしさは無く、更にはこれも大事な要素だと断言するが、それでは見映え的にもアガらない。
旧車人気が高まる中で復活した「ADVAN HF Type D」は、まさにそんなユーザーの声に応えるスペックを引っ提げていた。適度なグリップ力、旧車にぴったりのサイズラインナップ、そして文句無しにカッコいいデザインだ。
■トレッドもサイドもたまらん!! 見た目も完全に当時と同じ
ロケ地は、まさに「イニシャルD」に登場する“聖地”のひとつである表筑波スカイライン。
おあつらえ向きの舞台で改めて眺めた、「ADVAN HF Type D」を履いた自分のハチロク、本当によく似合っているなと嬉しい気持ちになった。
スクウェアなショルダーのプロファイル、やや丸みを帯びたサイドウォールは、まさに当時を忠実に再現したもの。大書きされた「ADVAN HF Type D」のロゴが何とも誇らしい。
何より特徴的なのが、そのトレッド。アウト側のセミスリック部分にディンプルを配し、イン側に太いグルーブを切ったこのデザインこそ、まさに当時羨望の眼差しで見ていたものだ。
ちなみに「Type D」の「D」は“Dimple”が由来だそうである。
普段、クルマを停める時にはステアリングは直進状態にしている。けれど……このタイヤを履くとどうしても、左右どちらかに少し切って、このトレッドデザインを眺めたくなってしまう。
装着サイズは195/50R15。当時を知る人にしてみれば、これでも大径でワイドだと思うだろうが、イマドキのハチロクではホイール選択肢も多い“普通の”サイズである。
適度に張り出したオフセットと、印象的なデザイン、ロゴ。まさにハチロクらしい雰囲気がイイ。
嬉しいことに「ADVAN HF Type D」はハチロクの純正サイズである185/60R14や、185/70R13も設定されている。純正派の人にとってもいいチョイスになるはずだ。
■コーナーが超気持ちいい!! AE86の醍醐味をフルに引き出すタイヤ
では走りはどうだろう? ワインディングロードに出ていくつかのコーナーを抜けるうちに込み上げてきたのは、昔を思い出すような不思議な感覚だった。
グリップ限界は際立って高いわけではないが、手応えは、まさにスポーツタイヤのそれ。
操舵していって旋回グリップが立ち上がってくる辺りの曖昧さの無いカチッとした感触は、ショルダー剛性の高さを感じさせるし、コーナリング中もヨレなどを感じさせることはなく、セミスリック部分が大きく寄与しているだろう強靭なブロック剛性を強く意識させる。
そしてコーナーからの立ち上がりでは、アクセルを踏み込むとリアからグッと押される感覚が頼もしく伝わってきた。高いグリップ力とケース剛性が生み出す縦方向の強いトラクションが、FRの走りの醍醐味をフルに引き出しているのだ。
実は表筑波スカイラインは、聖地となる以前からの馴染みの道である。
そんな舞台で試した「ADVAN HF Type D」は、まさにストリート用として適度なグリップ力とスポーツタイヤらしい手応えのバランスが良く、それがクルマとの対話感あるいは一体感に繋がっていた。
絶対的な速さが欲しいなら選択肢は他にもある。操る楽しさが欲しいからこそのハチロクだ、「ADVAN HF Type D」はそんな旨味を引き出すための、まさにベストチョイス。年月を経て、ようやく履けるようになったADVANとは、きっと長い付き合いになるだろう。
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