「新しいものは正義」とはいうが、古くても、ファンにとっては特別なクルマはいくつかある。昨今は20~30年前の国産車でありながら、信じられないくらい価格が爆上がりしているクルマもあるなど、現代のクルマにはない魅力にとりつかれている人も少なくないようす。数ある日本の名車のなかから、20年で価格が2倍になったクルマをいくつかご紹介しよう。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN、MAZDA、HONDA、ベストカー編集部
日本が誇る伝統のスポーツカー R34型スカイラインGT-R
R34型スカイラインGT-Rは、1999年1月に登場。車名に「スカイライン」の名が付く最後のGT-Rである同モデルは、ボクシーで筋肉質なスタイリングや精悍なヘッドランプ、2ウイングタイプの派手なリアウイングで、スカイライン伝統の力強さと機能美を感じさせてくれるモデルだ。
エンジンはR32から続く2.6L 直6のDOHCツインターボを搭載し、ドイツ・ゲトラグ社と共同開発した6速MT、ヨーレートフィードバック制御を備えた電動スーパーHICAS、ブレンボ社製ブレーキなど、サーキットに持ち込んでも本格的なスポーツ走行を楽しめるメカニズムが満載されていた。
そんなR34 GT-Rの中古車相場は、安くても1000万円オーバー。3〜4万km程度の低走行車となると3000万円前後、限定モデルの「ニュル」系だと6000〜8000万円前後まで跳ね上がる。当時は新車価格700万円程。昔に戻れることならば、一台保有しておきたかったクルマだ。
燃費は極悪だけどとにかく楽しい!! マツダ RX-7(FD3S)
FD3S型RX-7は、1991年〜2003年に販売されていた3代目のRX-7だ。柔らかく滑らかな曲線で構成されたエクステリアは美しく、1,230mmの低い全高と合わせて惚れ惚れするようなデザインが魅力のモデル。ロータリーエンジンの宿命ともいえる極悪な燃費性能は、カタログ燃費では7.2km/L、実燃費は普通に走って5〜6km/L、ちょっと回すと3km/Lと、考えただけで恐ろしいレベル(しかもハイオク)だが、運転する楽しさはピカイチであった。
クルマがクルマなだけに中古車ではアフターパーツでチューンした車両、修復歴あり、10万km超えの個体が多いが、それでも価格は安くても300万円以上、少し程度のいいものに乗ろうと思ったら600万円以上は当たり前という相場となっている。マツダのピュアスポーツカーとして、珠玉の出来だった一台だ。
日本のスポーツカーのイメージを変えた ホンダNSX(NA1)
1990年に登場した初代NSXは、3.0L V6DOHC VTECエンジンをミッドシップに搭載した2シーターで、オールアルミモノコックボディ、ハンドリングにこだわった本格的な高級スポーツカーというコンセプトで登場したモデルだ。1グレードのみの新車販売価格は800万円と、当時のスポーツカーとしては日本の最高価格をつけ、話題となった。
ミッドシップレイアウトであるにも関わらず、エンジン後方にさらにトランクを備えているという独特のパッケージングであるため、キャビン後方のセクションが非常に長いという特別なスタイリングだったが、初代NSXは間違いなく、日本のスポーツカーのイメージを根底から覆してくれたモデルだ。また、世界初のアルミ製軽量高剛性ボディは、すでにF1で実証済みであるホンダの高い技術力が惜しみなくフィードバックされたものであり、並の高級スポーツカーではないことを世界に知らしめた。
中古車相場価格は、修復歴なしでやや程度の良いものに乗ろうと思ったら、30年以上前の年式でも新車と同じ800万円以上、フルノーマルで低走行車となると1300万円〜。低走行距離のタイプRとなると2000万円を超える個体もある。ただ、いま買ったとしても、大切に乗れば、ますます価値が上がるに違いない。
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これらは、映画「ワイルドスピード」シリーズや、人気マンガ「頭文字D」の作中車として登場したことで人気が上昇し、価格が上がっていることもあるだろう。北米では右ハンドルの日本仕向けのスポーツカーが「JDM(日本市場向け、という意味)」とよばれ、マニアの間で人気となっている。特にR34はいま、北米の「25年ルール(基本的には右ハンドルが輸入禁止だが、製造から25年が経過していればクラシックカーとして登録できるという制度)」が解禁されたタイミングにあるために相場が高く、非GT-Rの25GTターボも、相場が爆上がり中だ。
そのため、安くて上質の個体は、どんどんと海外へ輸出されていってしまっている。販価が高くても、リセールは落ちにくい(むしろ上がる可能性も)クルマばかりなので、「迷う理由が価格ならば買え」ということばもあるように、高くても買って損はない(もしくは少ない)はず。迷っている人は決断してみてもいいかもしれない。
※編集部注/生産終了しても世界的に人気を博し、ファンを魅了する日本車は、どれも趣味性の高いモデルばかり。クルマはやはり「個性を象徴するもの」であり続けるのだろう。願わくば、安心安全や環境性能も重視しつつ、クルマ好きに愛されるクルマがたくさん残ってほしい。
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