今でこそ落ち着いているが、かつてクルマのヒエラルキーときたら凄まじいモノだった。しかもデラックスといいながら安っいグレードだったりで、名前と実際の立ち位置が違うなんてのはザラ。これ今考えると衝撃ですぜ!!
文:小鮒康一/写真:ベストカーWeb編集部
■足もライトも別!? 同じクルマなのに種類ありすぎ!!!
現在販売されているクルマたちにもエントリーグレードや上級グレードなど、標準装備などに違いがあり、車両本体価格も異なる仕様が用意されている。
現行型の車両の多くは1車種あたり3グレード前後の設定が多く、あとはガソリンかハイブリッドかなどのパワートレインの差異程度となっているものがほとんどだ。
しかし、まだまだクルマ自体が高級品で多くの人が気軽に所有することが叶わなかった70年代くらいまでは数多くのグレードが存在。
搭載されるエンジンもひとつの車種にさまざまな排気量のものが用意されるなど非常に多くのバリエーションを持っていた車種が多かった。
またミドルクラス以上の車種を中心に、見た目の差が大きくなるものも珍しくなかった。
上位グレードと下位グレードでバンパーやヘッドライトの形状が異なって車種も。
中には上位グレードは四輪独立サスペンションであるのに下位グレードはリアが車軸式サスペンションになるなど、メカニズム的にも大き違いを持たせていた車種もあったほどだったのである。
とはいえ当時は前述したようにまだまだクルマ自体が高級品。
苦労して念願の愛車を手に入れるという人も少なくなかった時代ということもあってか、実は下から数えた方が早いグレードであっても「デラックス」というようなグレード名が付けられることが多かったのだ。
■下から2番目なのにデラックス!? 4代目クラウンが複雑すぎ
グレード名の例として1971年2月に登場した4代目クラウンをピックアップすると、セダンボディの最も安価な仕様は「クラウン」とグレード名すら備わらないものとなっており、便宜上“スタンダード”と称されることが多かった。
そしてスタンダードのひとつ上のグレードが「オーナーデラックス」、その次が「デラックス」、そして「スーパーデラックス」とデラックスなグレードが3つも続くのだ。
そして最上級グレードとして「スーパーサルーン」というラインナップとなっており、最も安価なスタンダードと最上級のスーパーサルーン以外のグレードは全て「デラックス」系というデラックスの大盤振る舞いとなっていたのである。
ちなみにクラウンのグレードとして有名な「ロイヤルサルーン」についてはこの世代には存在せず、次の5代目モデルで初登場となっている。
■まだまだあるぞ謎グレード!! GLにGXさらにカスタムの正体って!?
当時のグレードで分かりにくいものはまだまだ存在しており、例えば2~3代目サニーに存在していた「GL」や「GX」というグレードも一見するとどちらが上か分かりにくい。
このグレード名の解釈には諸説あるようだが、GLは「Grand Luxury」、GXは「Grand Extra」となり、前者は「特別豪華な」、後者は「特別偉大な」という意味になる。
結局日本語に訳してもどちらが上なのかは判断しにくいというのが正直なところだが、サニーの場合はGXが最上級グレード、GLがそのひとつ下のグレードということになっていた。
また「カスタム」というグレードは日産セドリックに初代から存在する歴史あるグレードでもあった。
これがクラウンになると2~6代目モデルまでのステーションワゴンモデルにカスタムのグレード名が与えられており(7代目からは“クラウンワゴン”となる)、こちらもグレード名だけでは判別が難しいものとなっている。
■では現行車が分かりやすいかというと……?
このように昔の車種では、グレード名を一見するだけではどちらが上級かすぐに判別が難しくなっていたが、現在のモデルが分かりやすくなっているかというと実はそうでもないようだ。
現在のモデルの多くはグレード名に「X」や「G」など、アルファベット1文字を与えている車種が多く、グレード名エンブレムを備えるものも少なくなってきていて、こちらも一目でグレードの優劣を判断することが難しくなっている。
また同じアルファベットであってもメーカーによってそのポジションはさまざまだ。
例えば「X」系のグレード名はトヨタではエントリーグレード、日産では中間グレード、スズキでは上級グレードにそれぞれ与えられており、ユーザーがどのメーカーの車両に乗っているかで、同じグレード名でも与える印象が大きく異なっているのだ。
そう考えると今も昔もグレードの上下が一目でわからないようにメーカー側が配慮している、という説もありそうだ。なぜならどんなグレードであってもユーザーにとっては大切な愛車であることに違いはないからだ。
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