市街地をはじめ山道などに設置されているガードレール。もしもの時に被害を軽減してくれるモノだが、よく考えると交換している風景ってあまり見ないような……。一体アレってどれくらいの年数使えるモノなのか!?
文/近藤晃史、写真/TOYOTA、SUBARU、AdobeStock(トップ写真=decoplus@AdobeStock)
■設置位置に厳格な決まりなし! 自治体負担の場合交換が先延ばしになることも
公共性の高い設備をインフラと呼ぶが、自動車に密接に関係するのが道路だ。ひと口に道路と言っても、路面や路肩、街路樹など、さまざまなものから複合的に成り立っている。
そのなかで歩行者保護や車両の飛び出し防止などのために設置されているのがガードレール。ガードするためのレールという、名称もそのものズバリなだけに、当たり前に設置されているし、知らない人もいないだろう。
当たり前すぎる存在のガードレールだけに、普段はあまり気にも止めないかもしれない。ただ、よくよく考えてみると、疑問というか、気になるところが出てくる。
まずは設置基準で、以前右直の事故でぶつけられた車両が飛び出して園児が死傷する事故が発生した際、交差点の角にガードレールがなくて問題になったことあった。
こうなると基準がよくわからないが、国土交通省によれば設置目的は「クルマの進入を防止したり、道路外への飛び出しを防ぐ」としていて、一般的な理由となっている。そのほか「歩行者が不用意に渡るのを防ぐ」という目的もあって、設置場所はそれに準じたものとしている。
ただ、先の事故の例を見てもわかるように、具体的にどこに設置するというのは曖昧で、その都度判断しているようだ。
紹介したのは国の基準だが、地方自治体レベルでも同じではある。安全に関係するものだから、ドンドン設置して、例えば車道と歩道を区切ればいいではないかと思うが、問題は財政となる。自治体は基本的に財政的にきついので、新設はもちろん、修理や交換についても闇雲にできないのが現状だ。
■1m1万円と意外と安い!! だが事故ると50万円の請求もザラ
まずは価格を調べてみると、1mあたり一般的な凹型の鉄板タイプが1万円ぐらい。パイプタイプだと同じく5000円ぐらい。
もしぶつけて弁償するにしても、意外に安くてこれならいいかと思うが、激しくぶつかると支柱も倒れることは当たり前にあるのでこちらは基礎からの作り直し。また1mで被害が済むことはあまりなくて、5mぐらい軽く及んでしまう。
実際にぶつけたことがある人に聞くと、ガードレールはすべて繋がっているので、ぶつけたところから離れているところにも被害が及びやすくて、10mぐらい交換になってしまってもまったくおかしくないとのこと。
さらに役所担当部課の職員によると、「定価で請求になります」と当たり前の返事が。さらにほとんど歪んでいないように見えても、安全のために交換してしまうし、施工業者もぶつけた側の懐事情に気を使ってくれるわけでもないので、遠慮なく広めに交換となってしまう。
つまりコンクリートで作られている支柱の根本と5mぐらいの交換で、材料代が10万円ぐらい。さらに人件費などを入れると20万円から30万円ぐらいはザラ。もちろんそれ以上に被害が大きければ、50万円などの請求になることもある。自動車保険の対物に入っていればカバーできるとはいえ、痛いことは痛い。
■保険対象外のサーキットは高い!! 1枚4万超えのケースも
また、ガードレールの弁償というと、サーキットを思い浮かべるかもしれない。知らないと、コースアウトしてガードレールにぶつかって壊しても、参加費や走行料金に含まれていると思うかもしれないが、弁償するのが通例(保険などはある)。
いくつかのサーキットの費用を見てみると、鈴鹿サーキットではガードレール1枚が3万900円で、支柱1本交換が3万400円と高額で、さらにオートポリスではガードレール1枚が約4万4000円〜となっている。
いずれにしても、市中よりもかなり高いように見えるが、人件費を入れての金額で、逆に市中のものも結局は1mあたりこれくらいするとも言えるだろう。
■耐用年数は10年だが、見た目で判断するケース多し
このように意外に高価なガードレールの耐用年数はどれくらいなのだろうか?
自治体が発表している資料によると資産として評価されるのは10年。紫外線などでカサカサになってくるので、見た目的にもつのもこれくらいだろう。ただ、冒頭で触れたように現在、各自治体は財政難のところがほとんどで、ガードレールの交換を含めたインフラの整備をすべてスムースに行えていないのが現状だ。
カードレールについては破損やサビによる腐食が見られないようなら、できるだけ使うというようになっていたり、また痛むのは袖ビームと呼ばれる両端の部分なので、ここだけ交換ということなどで対応はしている。これも点検して随時といったところ。
つまり、素材が鉄だけに、規定の耐用年数ではなく、実際に見てみて、限界が来たら交換というのが実際で、交換しているのをあまり見かけないのはそのためだ。
そのほか、一時話題になった、隙間に突き刺さった謎の金属片や、材料不足によるガードレール盗難など、価格や耐用年数以外にもいろいろな問題というか話題がガードレールにはあるので、機会を見てまた紹介したいと思う。
投稿 ガードレールの交換ってあんま見ないけど……耐久年数ってどれくらい!? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。