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ラリーシーンを席巻し衝撃的なデビューを果たしてから数々のレジェンドを培ったクーパーS、有終の美を飾る…|1971 BL MINI COOPER S MkIII

ワークスチームの期待を背負ったクーパーS。違わぬ実績を残し、ミニの名を世界に轟かせた。1963年の登場から8年。事業合理化の波に逆らうことはできず、コンペティションシーンからの撤退と前後し、三世代めのMkIIIモデルをもって(英国製の…)エボリューションモデルの名は歴史から消える。では、最終期のクーパーSを紐解いてみよう。

1971 BL MINI COOPER S MkIII

 1969年の10月、当時のサルーン系モデルはADO20のプロジェクトネームで、MkIIIに進化した。ドアヒンジのコンシールド化に伴い、スライド式だったサイド・ウィンドゥも巻き上げ式となりレギュレータを装備した。ブートリッドも新しい設計となって、ボディシェルが改変されたことによってADOナンバーが付与されたのである。さらに、グリルの意匠が変更されたり、ダッシュボードの左右には走行風を取り入れるベンチレーションがついた。また、コスト面の見直しにより、ハイドロラスティックは廃止されてラバーコーンサスペンションになった。

 ’60年代後半の英国工業の不振は相当なものだったらしく、ヨーロッパ随一のメーカーだったBMCもレイランドグループやローバーグループなどと合併し、その身を永らえなければならなくなった。BMCからBLMC(ブリティッシュ・レイランド・モーター・コーポレーション)となったのは1967年。そして2年後の1969年10月には、それまでの『オースチン』『モーリス』の各ブランドネームは取り去られ、シンプルなBLブランドのバッヂに変わった。いずれにせよ、時代の流れを反映するカタチで、ミニは’70年代を迎えたのである。

 一方でスタンダード・クーパーは’69年に生産を終える。クーパーSも’71年には、その生産を終了する。これは、新会社がクーパーとのライセンス契約を継続しなかったため。そして、コンペティション・デパートメントの閉鎖とともにエボリューションモデルは次のステップへと移行、1275GTへと受け継がれることになる。

 ゆえに現車はクーパーSの最終期のモデルとなる。パッケージ的には評価は高いものの、概ね1千600台という僅かな生産数で幕を閉じた稀少なモデルなのである。

MkIIIのグリルは、基本的にMkIIからのキャリィオーバーとなるが、グリルの意匠はオースチンのものと同様。細い11本バーである。先代、先々代とブランドネームを冠し、デザインも凝らされたバッジやエンブレムを装着していたが、合理化の煽りはこのように味気ないシンプルなバッジへの一本化となった。サイドマーカーは日本輸入時の改善で装着されたもの。ルーカス製の灯体である。フェンダーミラーもオリジンには装着はないので、日本で装備されたものである。

リアエンブレムも実に簡素なプレートになってしまった。輸出されたモデルに関してだけ旧来のブランドネームを記したプレートが装着されていた。販社の関係だと思われ、日本国内にはには『MORRIS』も輸入されている。スカットルに付いたエンブレム。サイドエンブレムの装着はMkIIIから始まった。

車輌の輸出を考慮したためか、ブートリッドのプレス形状が変化した。横長の英国ライセンスプレートの仕様から、日本で使うような矩形のプレートも装着できるようになり、ライセンスランプの形状も最終型に続くスタイルに変えられている。MkIIIでラバーコーンに変更されたものの、クーパーSは’71年の終了までハイドロラスティックが装備された。角形の2色テールコンビネーションランプはMkIIと同様。ブレーキシステムもフロントディスク、リアリーディングトレーリングドラムはキャリィオーバーだ。

合理化されたBL時代は内装トリムのパターンが激減し、ボディ色と内装色を対応させるカラースキームは資料によると9種類。特注でブラックボディなどのオーダーができたようである。MkII時代にブラック一色になってしまった内装は、MkIIIになるといくつかカラーが増えている。合理化には適用しなかったのだろうか。一方で、ルーフを塗り分けるデュオトーンは廃止されてモノトーンだけの設定になっている。よりコストの掛かりそうなことは制限されたのだ。ステアリングホイールやタコメーター、フロアマットはドレスアップした状態である。

エンジンのスペックは基本的にはMkII時代の1275ccとほぼ同様。エンジンナンバーは12Hから始まる。シリンダーヘッドはパーツナンバー12G1805のものが使われ、ポート形状などが異なっている。SUキャブレータ、HS2をツインで装着し76馬力の出力を発揮する。ディスクブレーキを装着しているので、ブレーキサーボが標準装備される。現車のエアクリーナ、ロッカーカバーはドレスアップされて非オリジナル。エアクリーナはエレメントが入るケースが用いられていた

クーパーSは標準装備でツインフューエルタンクを装備していた。片側で25リッター(5.5ガロン)、トータルで50リッターの燃料積載が可能であった。鍵付きのフューエルフィラーキャップはクロームメッキの他に、ボディカラーにペイントされたものもあったようである。

ZOOM UP MINI 1971 BL MINI COOPER S MkIII specification
(オリジナルモデル・データ)

全長    3,050mm
全幅    1,350mm
全高    1,410mm
ホイールベース    2,040mm
車輌重量    682kg
エンジン形式    12F型 水冷直列4気筒OHV
排気量    1,275cc
ボア    70.61mm
ストローク    81.28mm
圧縮比    9.75:1
最高出力    76.1hp/6,000rpm
最大トルク    10.93kg-m/3,000rpm
キャブレータ    SU HS2 型×2基、
口径31.75mm
変速比    1速  3.330、2速  2.090、
3速  1.353、4速  1.000、後退  3.350 
(オプション・クロースレシオ 1速  2.570、2速  1.780、3速  1.242、4速  1.000、後退  2.570)
最終減速比  3.444
(オプション3.938、4.267、4.350)
ブレーキ    フロント:7.5インチ・ディスク
                  リア:7×1.25インチ・ドラム
 フロント・トレッド 1,234mm
 リア・トレッド       1,201mm
 タイヤ            ダンロップC41(5.20-10)、
ダンロップSP41(145-10)
フロント・サスペンション  ダブルウィッシュ
ボーン、ハイドロラスティック
リア・サスペンション  トレーリングアーム、
ハイドロラスティック
ステアリング    ラック・アンド・ピニオン
生産期間 1970年3月〜1971年6月
生産台数 1,600台程度

SHOP DATA
ミニ屋Aiフラジル
tel.027-288-9985
http://www3.wind.ne.jp/miniya


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