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トランスジェネレイション Vol.1「後世に残すべきボディワークを発信したい」

トランスジェネレイション Vol.1

トランスジェネレイション。新たな世代が過去から引き継がれてきた環境を自分たちの価値観でアップデートする様を見たい。そういった想いで連載が始まる。第一回はボディワークのスペシャリストとしてミニを見つめる勝又徳久氏に話を聞く。「後世につなげるための橋渡し」としての役割とミニに向けた想いとは…。

ブラウンオートボディ
勝又徳久(かつまたのりひさ)
トランスジェネレイションとは?
標題の『トランスジェネレイション』は、新たな環境に適応する世代といった意。過去から引き継がれてきた事柄をどう新しい時代にアジャストしていくのか、多くの声を聞きたいと思っている。もちろん読者諸兄姉とも一緒に考えていきたい事柄だ。ミニを大切にするために……。

後世に残すべきボディワークを発信したい

 広義ではミニ・スペシャルショップとして捉えて間違いはないのだろうが、今回訪れた『ブラウンオートボディ』はミニを含む英国車を主たるターゲットとして鈑金塗装に特化したショップだ。牽引するのは勝又徳久氏(かつまたのりひさ43歳)、工場を開設して1年と数ヶ月を過ぎたフレッシュなオーナーである。

 とはいうものの自身の経歴は、ミニの申し子とでもいえそうなベテラン顔負けのバックボーンがある。ご存じの向きもあるだろうが、勝又徳久氏はJMSAの常任理事である勝又一明氏を父に持ち、現ケントガレージ代表を務める勝又清氏は叔父にあたるという、名実ともに“ミニ屋一族”なのである。

 「子供の頃から自然にミニのフィールドに連れて行ったんだね。第一回のクラブ305ミーティングから一緒に行ってる……」と父、一明氏はいう。’80年代、草分けのミニイベントでの風景である。

 「それこそ305のジムカーナ・コースオフィシャルは、ケントガレージがスタートする以前、小学校1、2年生の頃から手伝っていたんです。ミニディはFISCOでやった第一回からスタッフ。そこから28年間、ずーっと実行委員側ですよ」日本でミニが爆発的に広まっていくプロセスをアクティブなフィールドでしかと見届けてきたわけだ。


 そのような希有な環境の中、徳久氏は英国留学を経た後に帰国、車輌塗装のスキルを修行してケントガレージに籍を置いた。鈑金塗装部門を確立するために、自身が入社し、鈑金の親方を迎えたという。そうして積み上げてきた鈑金塗装の実績は、独立した現在までに140台をこえる膨大なプロジェクトとなったと話す。

 「ミニの場合はもはや一般的な修理鈑金塗装ではなくて、それこそレストレーションと同様の発想ですよ。ボディに手を入れるとなれば、その後どれだけ新車に近いコンディションで維持し続けられるのか、常にそう考えて仕事に向かっているんです。だから、防錆のサフェーサとかプライマは、全国の著名塗料メーカーの開発の方々と一緒になって作りだしたものがたくさんありますね」


 こういった製品は時間が経たないと結果が得られないので、評価もひと筋縄ではいかないのだろうけれども、いまは安定した結果を得ていると話す。なんとも、力強いことではないか。


 ミニという逸材を後世につなげるための橋渡しが自らの役割だという。


 「いま、自分が所有しているミニを気持ちよく楽しんでもらうためのケア。そうとなれば鈑金塗装も整備と何ら変わらないと思ってます。けれども、費用と納期が大きく違うことだから、簡単にできるものでもないし、自分がやるべきことなのか、と考えてしまうのは無理ないですよね。ただ、乗っていて何とかしたいと感じるのであれば、その気持ちはお手伝いしたいし、オーナーに負けないほどの愛情を注ぎ込んで仕上げたいと考えてますね。まぁ、少なくとも一ヶ月間、それ以上の時間で寝ても覚めても一台のクルマに没頭するんだから情が湧きますよ。オーナーの想う以上の仕事を全力で努める、これが信条かな」

 ゆえに、クルマの個体としてのヒストリーや車格を鑑みて、オーナーが希望する配色を全力否定することもあるという。後世に恥じる仕事はしたくないからだと話す。
「だからディスカッションもするし、見積もりにも時間はかける。二時間以上かけて立ち会いで専用フォームに記入していくんです。内容は細かいですよ。それでも見積もりに納得できなければ、先に進まなくても一向に構わないです。そこまでの料金はいただいていませんよ」という。オーナーと同じ方向を見据え、同じ情熱でクルマに向かいたいからだ。これが勝又徳久氏の矜持なのである。


 ひとつアドヴァイスをもらった。鈑金塗装は一台まるごとだけが方法論ではなく、予算に応じてエリア毎に分割し、整備と合わせて数年計画で仕上げることも可能だという。まずはフロント、お金が貯まったら次はフロア、そしてリア側とか……。実際そういったプランで愛車を段階的に直しているオーナーもいるようだ。実際のところ、かかる時間をどう汲み取るかは自由だが、5年、10年、それ以上にもミニにワクワクし続けるのは嬉しいことではなかろうか。ミニを長く愉しむなら、10年かけたプランでもイイじゃないか、である。


 時代の流れでユーザーの思考が変わってきているのは事実。生活の様式も変わるし、クルマ自体の立ち位置も変わる。これから先、徳久氏の描くビジョンは実に興味深い。

鈑金ブースは整然としてプロフェッショナリズムが漂う。使いやすいように加工されたハンマーが印象的。
ユーザーがミニを降りるのは新しいクルマへのステップ。いずれもう一度ミニに帰って来ることを想い、ネガティブに受け取らないように説明するという
塗装ブースにはカニ目。かなり強烈なコンディションだったが、本人は楽しそうにさえ見えた。
SHOP DATA
ブラウンオートボディ
https://www.brownautobody.co.jp/about-us/



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