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燃焼室だけじゃない! ブロックにも優しい設計

田中代表によれば、そもそもこのピストンは「理想の爆発と長寿命を実現することで、新車当時のエンジンコンディションを永く維持すること」をコンセプトに設計したもので、レースやスポーツよりも、ノーマルエンジンに向けて開発されたものだという。

というのも、先述したように、近年のミニのエンジンは消耗が激しく、ピストンをサイズアップしなければならない状況が増えてきている。

そこで、田中代表はメカニックとしての目線で、純正に変わる「最高のリペアパーツ」を実現すべく、ピストン開発に乗り出したのだという。

したがって、このオリジナルピストンには、エンジンにダメージを与えないための工夫が随所に施されているのだ。

シリンダー保護のミソともいえる、両側に施された「オートフィットコート」。 photo=streetmini

「まず、この黒いコーティングはオートフィットコートと呼ばれるもので、これを施すことでシリンダーとのクリアランスを最適化し、首振り運動によるシリンダーへの攻撃性を抑えます」。

このピストン径はシリンダー径71.000mmに対し、70.935mmに設定されている。ここに膜厚0.030mmのコーティングを両側に施すことで、組み付け時のクリアランスが0.005mmになるのだという。

このコーティングが完全に剥がれ落ちるまではピストンそのものやシリンダーも消耗しないため、オーバーホールまでの期間が純正ピストン使用時よりもさらに延ばすことが期待できる。

さらに、ピストンリングは高品質なNPR製のスリーピースを採用しており、それぞれのサイズを1.0mm、1.2mm、2.4mmに設定することで、摺動抵抗の低減も狙っているという。

鋼材にジュラルミンを使用したことに加え、内側をさらに削り込むことで、純正よりも33g軽量な仕上がりに。 photo=streetmini

また、フリクションを抑え、クランクメタルへの負担を軽減するために、ピンを含む重量を33g軽量化。

このように、工夫と改善をスキなく凝らすことで、エンジンの長寿命化を実現したのだ。

 

製品情報

ストックヴィンテージ
オリジナル鍛造ピストン+20

150,000yen(税別)

 

ストックヴィンテージ
田中代表

「ミニのパワーアップは、コンディションを整えることでロスを減らし、最大限のパフォーマンスを引き出すことがいちばんの方法」と語る、SV田中代表。同店からリリースされるパーツはサーキット向けの印象が強いが、実はいずれも快適な街乗り仕様を目指して開発されているのだ。

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●ストックヴィンテージ
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photo=streetmini text=ken nakajima

special thanks=ストックヴィンテージ
※この記事は、STREET MINI vol.40 2019/4月号掲載記事を加筆・訂正して再掲しています。