Radford Japan DHR がコーチビルドを始めるにあたり、我々のビジョンを理解しプロジェクトを依頼してくれる顧客が必要でした。
今回製作したドライバースペース全体のモデファイは既に装着されていたエアコンシステム、パワーステアリングという現代の乗用車では当たり前の装備をクラッシックスタイルに融合させる中で、一つ一つのパーツは新しく、雰囲気は昔のままの、60年代にロールスやベントレー、ジャガーに施されたコーチビルディングを再現する事でした。
昨年英国で発表されたDavid Brown Automotive社によるMini Remastered モデルが、Radford Japan DHR をインスパイアーするきっかけになりました。ショーモデルは多数公開されていますが、デリバリーされたという情報は未だありません。
私の頭の中には以前からぼんやりとしたイメージはありましたが、それをどうやって再現するかという手法に関しては明確な指針がありませんでした。
お客様から依頼されてスタートしたプロジェクトでしたが、今振り返っても、当初お客様と相談を開始した頃のイメージと、最終的に完成したスタイルには大きな隔たりがあります。
当初お客様から頂いたメインテーマはピアノブラックでした。
ところが我々とお客様の双方がメールやショートメッセージを通して互いにアイディアをどんどんディスカッションするにつれて徐々に方向がクリアになると同時にコンセプトもはっきりと見えてきました。
私はお客様のミニで1960年代にビートルズメンバーがそれぞれ乗っていたミニのコーチビルドモデルを再現する事をご提案しました。
中でもポールマッカートニーの乗っていたミニはミニカーで販売されるほど知れわたっているにも関わらず、あまり注目を浴びる事はありませんでした。
プロジェクトのスタート時点で、このドライバースペース全体のモデファイはワンオフモデルである必要はないが、実用性に足る静粛性や丈夫さ、メンテナンスの容易さを備える為、ある程度規格化されたパネルの製造からスタートしました。
そのため、単にポールマッカートニーモデルの忠実なコピーであるよりも、むしろ様々なアイデアを出しながらお客様との作業を進めることができました。
この一枚に、このミニの素性がしっかり残るように工夫されています。
エアコンやパワステはもちろん、もしも現代でポールマッカートニーがオーダーしたらUSBポートも当然ですよね。